シン・エヴァ冒頭公開記念『綾波忘却計画』全文掲載!

綾波忘却計画 滝本竜彦

初出 2004/04/01発売 新世紀エヴァンゲリオンエヴァ&エヴァ2アンソロジー 

 エヴァの放映が終了した夜、多くの青少年が絶望した。
「明日から何を楽しみに生きてゆけばよいのだろう……」
 そしてエヴァ劇場版が上映された日、多くの青少年が心に深い傷を負った。皆、言葉にならない芒洋とした気持ちを抱えて映画館を出た。
 だが一部のものは、エヴァに対するモヤモヤした感情を二次創作小説に吐き出して、自分の気持ちに折り合いをつけようとした。こうして一九九七年、空前のエヴァ小説ブームが到来した。当時ネットに存在していたエヴァ小説サイトはその数、数百とも数千とも噂されていた。その巨大コミュニティーの片隅に、僕のホームページも存在した。メインコンテンツは恋愛小説。ヒロインは綾波、そして主人公は『僕』の、脳がとろけるラブストーリー……。
 僕はこたつに座って薄ら笑いを浮かべ、精神が腐るような妄想小説を書いた。大学一年生の僕は学校に行くのも忘れて、妄想含有量百バーセントの純粋自己満足小説を書いた。
 僕の考えた綾波は、ライフルも持たずに出ていったり、爆発したり、三人目になったり、びっくりするぐらい背が伸びたりすることもないので安心だった。当時としても旧式のNEC98で、僕は愉快に楽しくノータリン妄想小説を創作した。
 まったくそれは、あまりにも知能指数の低い青春エピソードであったが、せめて自分の書いた妄想小説の中だけでも、僕は綾波とお近づきになりたかった。僕はそれだけエヴァを好きだったし、僕は死ぬまで綾波だけを愛するつもりでいた。サークルの新歓コンパでも、僕は胸を張ってエヴァを布教した。
「みなさんこんにちは、北海道から出てきた滝本竜彦と言います。趣味はエヴァンゲリオンというアニメの鑑賞です。観たい人がいたらビデオを貸してあげますので、気軽に声をかけてください!」
 なぜかそれ以来誰も僕に声をかけてくれなくなったが、数ヵ月後、学園祭の夜に、サークルの皆が僕の寝床に大挙して押し掛けてきた。僕のアパートは学校近くにあったので、寝泊りに利用するつもりだったらしい。僕は嬉々としてエヴァンゲリオン大上映会を開催してやった。疲れ切っている皆を眠らせまいと、声を張り上げ解説した。
「ほらこのシーン!、ちゃんと見てよこのシーン、マジ凄いから!」
「うわああああああ! がおおおおおおお! ぶしゃぁー!!」ジンジ君が切れ、エヴァが吠え、ナイフが突き刺さって血しぶきが飛び、拳を振り上げ僕ははしゃいだ。
 しかし、皆は舌打ちして僕の部屋から出ていった。以後、二度と僕の部屋に皆が遊びに来ることはなかった。ひとり真っ暗な部屋に取り残された僕は思った。
 あいつらに何がわかる。
 エヴァを無視する人間は、低脳なのだ。エヴァを馬鹿にする人間は、全員僕の仇敵なのだ。
 どんなに頭の良い有識者の言葉でも、エヴァを悪く言うセリフだけは許せなかった。エヴァを馬鹿にする記事を雑誌で読むたび、僕は怒りにぶるぶる震えた。世が世ならテロで粛清してやるところだ。
知った風な口をきいて「ありゃ失敗作だね」などとエヴァを見下す奴らを僕は、死んでも絶対に許さない。エヴァの良さがわからない人間は、今すぐ己の不明さを恥じて切腹するべきだ。
 お前らに何がわかる。
 ある日、僕はゼミの研究発表でエヴァを上映した。
『映像メディアと文学の関わり』的なことを考えるゼミだったような気がするが、あまり詳しくは思い出せない。なぜなら途中で出席するのを止めたからだ。エヴァの凄さ素晴らしさをゼミで意気揚々と発表したところ、サブカル風の男が隣の女性にぼそりと囁いたのだ。
「いまさらエヴァってどうなのよ? あいつヤバくね?」
 僕は拳を握りしめてゼミ室から退場した。以後二度とその授業には顔を出さなかった。
 枕を涙でぬらし世間を呪った。何が「いまさら」だ。エヴァを消費できると思うなよ。綾波を忘れられると思うなよ──少なくとも僕だけは死ぬまでエヴァが綾波が好きなはずだった。その証拠に僕はエヴァグッズを腐るほど買い集めたし、UCCエヴァコーヒーも虫歯になるまで飲んだし、タメになるエヴァ本も本棚にズラリとそろえたし、映画館で売っていたネルフの帽子も持ってるし、シンジ君が表紙のスタジオヴォイスも発売日に二冊買った。
 もちろんセリフだって全部暗記したし、CDも毎日聴いたし、壁にポスターもぺたぺたと貼った。アパートに遊びに来た女性と二人きりになった夜も、僕はテレビでエヴァを観た。背後に人間女性がいると緊張したが、体育座りでエヴァを観ていると心が落ち着いた。このように僕の青春は何から何までエヴァだったし、僕は綾波レイが大好きだった。毎晩遅くまで、妄想エヴァ小説の執筆に精を出した。ヒロインは綾波で主人公は僕だ。物語のクライマックスで、僕は綾波に告白した。
「君が好きだよ、いつまでも君が好きだよ!」
 しかし……。
 しかし綾波はこんなとき、どういう顔をしたらいいのかわからないらしかった。
 表情を決めかねているうち、恐ろしい速度で数年の時が流れ去った。
 ハッと気づくと、僕は二十五歳になっていた。
 二十五の僕は「ハリウッドで実写エヴァが!」との大ニュースを聞いてもまったく動揺しない大人になっていた。「綾波役はどうなるのよ? いっそのこと黒人を起用して皆のドギモを抜いて欲しいよな。」と小粋なジョークを呟くぐらいに大人であった。もう「エヴァを汚すな!」などというファナティックなセリフは叫ばなかった。
 壁の綾波ポスターも、とっくの昔に剥がされていた。エヴァビデオは押入れの中でほこりを被っていた。完全暗記し、ことあるごとにスラスラ引用できたエヴァセリフも、今ではほとんど忘れていた。仕方なしに誰かとエヴァについて話す時も、僕は熱くならずにニコニコ喋った。「アレは実に画期的なアニメでしたねえ」そして誰かがエヴァを小馬鹿にしたとしても、もはや怒りは沸いて来ず、すでに何の感情も沸いては来ず、あの日終劇の二文字に感じた喪失感を、僕は見事に消費しきってしまっていた。あの言葉にならない苦悩を、ドロドログチャグチャの感情を、ぽっかりと心に開いた大穴を、僕は完全消費していた。それでも胸の内にただ一つ残されている感情があって、僕は笑った。それは痛さだった。このエッセイを書くに当たり、昔の資料を読み返してみた僕は、疼きだした胸の痛みに微笑んだ。みんなの恥ずかしい過去に僕はウキウキと心躍らせた。
 たとえば有名ライターさんが書き下ろした、あまりに寒いエヴァポエム。あるいはエヴァのことで師匠とケンカしたライターさんの裁判記録。そして箱根湯本駅に謎の人物が設置した「ようこそ第三新東京市へ」との立て看板──それらの記憶が紡ぎだすイタさ恥ずかしさに、僕は呻いてみんな馬鹿だったねと楽しく笑った。何もかも皆、痛々しくて素敵だった。いい大人も頭の良い有識者も、当時のみんなは、とてもイタくて面白く、僕も若くて狂っていた。押入れの奥からNEC98を引っ張り出して、数年前に自分が書いた妄想エヴァ小説を読み返してみたら、あまりの馬鹿さに脳がとろける思いをした。
 ──ひょんなことから自我に目覚め、ゲンドウの所から逃げ出してきた綾波が、小田急ロマンスカーに乗り込み、新百合ヶ丘で各駅停車に乗り換え、生田までやってくる。そして彼女は、深夜の駅前をぶらついていた僕とばったり出会って恋に落ちる。しかしネルフ保安部が迫り来る。
 僕は機転を利かせて彼女をアパートに匿った。もう大丈夫だ、ここにいれば安心だ。だからお願いだ、綾波、君はずっとここにいてくれ。たぶん僕は世界で一番君のことを愛しているよ。君さえいれば僕は他に何もいらないよ──。
「そうさ僕は、いついつまでも君が好きだよ!」
 しかし……。
 しかしそもそも君はどこにもいなかったし、僕の言葉は大嘘だった。虚構少女に対する熱い想いは数年も昔、遥か虚空に消滅した。それに綾波はとても無口で無表情な少女だったので、僕らふたりは、どんな顔をしたらいいのかわからないまま、カチンと固まり突っ立っていた。長らく僕らはふたりとも、何も言えずにぽおっとしていた。埒があかないので、僕は古い98のキーボードを数年ぶりに叩き、妄想エヴァ小説の続きをカチカチ執筆再開した。
「ごめんよ、綾波、僕はもうダメだ」
「そう」
「君のセリフが思い出せない。君の顔すら思い出せない。ねえお願いだ、戻ってきてくれ、僕には君が必要なんだ!」
「さよなら」
「そんな悲しいこと言うなよ。──そ、そうだ! 笑えばいいと思うよ!」
 すると綾波は第六話のラストと同じように、にっこり僕に微笑んだ。
「さよなら、竜彦君。あなたは死なないわ。私が守るもの」
 そうして電信柱の鳩が飛び、ふと振り向けば、もう綾波は、どこにもいない。
 僕は涙を拭って手を振った。寒くてイタい思い出すべてに、僕は笑顔で手を振った。


長年、いろいろなサイトにフリー素材のごとく無断転載されてきた本エッセイ、削除申請しても雨後の筍のように別サイトに転載され続けてきたのですが、こうなったら自サイトに載せてしまえということで掲載します。無断転載禁!

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このエッセイはこのアンソロジーに掲載されています。感動したら買ってね!(2019/07/07現在、新品発売中)

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滝本竜彦最新長編小説! 次元を超える愛の結晶がここに!

みなさんの感想まとめ その5

みなさんの感想まとめその1その2その3その4 『脳がしびれる神秘性』まさにそれが本作で表現したいことだったので、感想いただけてすごく嬉しいです。ありがとうございました。
ありがとうございます。今後も小説を深めて書いていきたいと思っています。
感想ありがとうございます。むずむずとした感覚、楽しんでいただけるとありがたいです。
読書メーターにはその他にも素晴らしい感想が多数アップされています。
ありがとうございます。次は驚かれないよう早めに出したいと思っています。
ネガティブ〜、NHK、読んでいただきありがとございます。音楽も聴いていただいて嬉しいです。昔から音楽を創りたいと思っていて、その願望が作中キャラに投影されていたりしたのですが(ネガティブ〜の渡辺など)、最近やっと自分で作れるようになりました
読書ブログ『くらげなす』さまに『ライト・ノベル』を取り上げていただきました。キャラクター、世界観、そして作品テーマと全般的にレビューしていただきました。ありがとうございました。
みなさんありがとうございました。 『ライト・ノベル』角川書店より絶賛発売中です。

アナログゲーム『ダイスニコフ』紹介ムービーBGMに、トラックメイカーTKMTの音楽が採用されました!

小説家・滝本竜彦、そしてトラックメイカー・TKMTについて

滝本の新作『ライト・ノベル』の発売日である11月29日が着々と近づきつつある今日このごろ、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 寒くなってきたので風邪などひかぬよう暖かくしてお過ごしください。。。 さて、本サイト、TatsuhikoTakimoto.comは小説家、滝本竜彦の作品に関する記事や、滝本竜彦に繋がりのある人々に関するニュースを紹介するページです。 一方、滝本の日常生活や、滝本が最近TKMT名義で始めたトラックメイキングに関するサイトがこちらになります。サイトの名前はTKMT’s Backyard(たきもとの裏庭)です。(ちなみにトラックメイキングとは、トラック=働く車を作ることではなく、トラック=音楽を作ることを意味しています) ですので、『トラックメイカーTKMTの音楽がアナログゲーム『ダイスニコフ』の紹介ムービーBGMに採用された!』という本日のニュースは、本サイトTatsuhikoTakimoto.comではなく、TKMT’s Backyardの方に書くべきかと一瞬、迷いました。 ですが、『ダイスニコフ』を開発した株式会社RAMCLEARの創業者である海猫沢めろんさんは小説家でもあり、同じく小説家の滝本竜彦の長年の友人でもあります。(私の小説、『僕のエア』の巻末にめろんさんが書いてくれた解説は超面白いです) よって、本件は『小説家、滝本竜彦に繋がりのあるニュース』として、こちらのページに書いてもいいのかもしれない、と思い直しました。 だからこっちに堂々と書きます!

株式会社RAMCLERの新作アナログゲーム『ダイスニコフ』紹介ムービーBGMに、トラックメイカーTKMTのゲーム音楽風トラック『In Search of Ancient Dragon』が採用される!

先日、株式会社RAMCLEARの代表取締役であり、新世代のアナログゲーム作家であるツムキ・キョウさんより直々にご依頼いただき、私の作った音楽を、このダイスニコフ紹介ムービーに使っていただくことになりました。 光栄です&ダイスニコフ、完成おめでとうございます!

ダイスニコフとは

アナログゲーム創作集団RAMCLEARの最新アナログゲームです。二人でサイコロを二個振りながら、様々な戦術と知略を駆使して、絶海の孤島を占領し合うというゲームです。 私は先日、めろんさんとツムキ・キョウさん直々のインストラクションのもと、『ダイスニコフ』のテストプレイに参加させていただきました。 初めてのプレイでしたが、ルールがシンプルでわかりやすく、すすっとスムーズにゲームの世界に入っていくことができました。 そして初回プレイなのに、ものすごく熱い、手に汗握る対戦をもうひとりのテストプレイヤーの方と繰り広げてしまいました。 ルールのシンプルさと戦略性の奥深さがハイレベルで両立していて、ダイスを二個振ってゲームを進めるたびに、子供のころに友達とゲームして感じたような強いワクワク感が蘇ってきます。 前作、ヘルトウクンから受け継がれた独特のファニーさと野太さがあるメカメカしい世界観が、島にボートで上陸して占領し合う対戦プレイを華々しく盛り上げてくれます。 はじめてのテストプレイ後、すぐまたもう一回やりたい! と思ってしまった素晴らしいゲームでした。 本当に凄い面白いゲームなので、ぜひ友達や家族や恋人とプレイしてみてください。 アナログゲームには、機械でするゲームとはまた違う、プレイヤー同士を仲良くさせる効果があります。自室に何個か置いておくと、来客があったときや、家族団らんのときに役立ちますよ。 ダイスニコフは11月24、25日に東京ビックサイトで開催されるアナログゲーム即売イベントのゲームマーケットにて販売されるようです。 またRAMCLEARの前作、ヘルトウクンはAMAZONにて11/17日より全国販売開始です!(私、滝本は昨年行われた第一回ヘルトウクン世界大会の優勝者です)

TKMT作の音楽『In Search of Ancient Dragon』について

せっかくなのでこの音楽についてもちょっとこの場で紹介させていただきます。作ったのは昨年末から今年の1月ぐらいです。 『In search of Ancient Dragon』フルコーラスはこちらで聴けます。 架空のRPGのテーマソングを想定して作りました。ゲーム・ミュージック風な音楽を作ろうということで、主な音源はKorg GadgetのKamataという、ナムコのいにしえのカスタム音源C30を現代に蘇らせたシンセサイザーを使いました。ゲーマーであれば心揺さぶられる音が鳴るシンセです。 シンプルDAWとして使いやすいKorg Gadget上でざっくりと音楽を作り、それを高機能なんでもできるDAWであるAbleton Live 10に持っていって細かく調整して完成させました。後半のスペーシーな部分は、Live10の新機能であるEchoという高性能ディレイエフェクトを使って作りました。 Kamataという音源が出す音は、なんというかストーリーを想像させる力があります。以下のようなストーリーを想像しながら音楽を作りました。
とある冒険者が古のドラゴンが隠し持つと言われる伝説の秘宝を求めて故郷の街を旅立つ。 長い旅のあと、冒険者は罠と危険に満ちたダンジョンを見つけ、その暗く長い迷宮を戦いの果てにくぐり抜る。 そして冒険者はついにたどり着いた地下深くの恐るべき龍の住処で、古のエーテル・ドラゴンの息吹を感じる。 古代の回廊の奥から地響きとともに超巨大なドラゴンが姿をあらわす。 冒険者は神々しいドラゴンを前に恐慌状態に陥ったが、全身全霊の意思を振り絞って剣を抜く。 だがそのとき、テレパシーによって、ドラゴンから冒険者へと、この宇宙の真理が伝えられる。 テレパシーによって伝えられるその古き智慧こそが、ドラゴンが隠し持つ伝説の秘宝だった。 自分の意識のキャパシティを遥かに超える智慧を伝えられた冒険者は、茫然自失となり、剣を取り落とす。瞬間、冒険者はドラゴンによって地上へと強制ワープさせられる。 地上に戻った冒険者は、身に余る智慧による重い足取りで、帰郷への旅路を歩きはじめる。
(いつかこんなファンタジー小説を書いてみたいです) 曲のタイトルはDJ Tiestが手がける有名なトランスのコンピレーション・アルバム『In Search of Sunrise』を参考にしてつけました。このシリーズはどれも素晴らしいアルバムなので、おすすめです!

追記:もうすぐ発売!滝本竜彦最新長編『ライト・ノベル』ぜひご予約ください

舞台『いと恋めやも』観劇して感激!

劇団クロジの松崎亜希子さんに、舞台『いと恋めやも』に招待していただきました! 素晴らしい最高の劇でした!

松崎亜希子さんについて

松崎亜希子さんはアニメ『NHKにようこそ!』に出演してくださった声優さんで、クロジという劇団の主催者でもあります。 アニメ『NHKにようこそ!』十一周年記念同窓会というイベントで、私は松崎亜希子さんにお会いしたのですが、そのご縁でクロジの最新舞台『いと恋めやも』にご招待していただいたというわけです! ということで8月22日の公演初日に、全労済ホール、スペース・ゼロにてクロジ第17回公演『いと恋めやも』を観劇してきました! 感激しました!

クロジについて

クロジホームページより引用。
2004年より活動を開始。 福圓美里・松崎亜希子が主宰する演劇プロデュース団体。2006年以降、森悠が主要な作家となる。近年では、年に一度のペース、東京の劇場で公演を行う。 作品は、華やかな舞台設定で観客の目を楽しませつつも、そこに正直な人間の姿を、時に痛々しく、時に滑稽に描き出す。 発足から数年は、関係性の拗れによる人間心理の生々しさを女性視点で切り取り、特に女性客の共感を集めた。 10周年を過ぎる頃から、クロジのテーマ・メッセージはそのままに、作品をより幅広い世代へ届くエンターティメントとして昇華させることを目指している。
『華やかな舞台設定』というのが、本当に華やかですごかったです。『人間心理の生々しさ』とか、『幅広い世代に届くエンターティイメント』などなど、まさにその通りで驚きました!

舞台『いと恋めやも』感想

舞台が凄い綺麗

幕が上がるとまず驚いたのが舞台の美しさでした。桜に覆われた大正時代の洋館が舞台なのですが、CG的な、超現実的な美しさがありました。これが目が喜ぶということか! 見てるだけで気持ちよくなってきます。 その舞台の上で動くキャラたちの衣装も色鮮やかで、素晴らしかったです。彼、彼女らが舞台の上でダイナミックに動く姿には、映画やゲームなど、他の映像コンテンツでは味わえない、舞台ならではの実在感ある美しさがありました。 観劇してからもう結構な時間が経つのですが、どのキャラもどのシーンもくっきりと思い出せそうな、長く残る映像的なインパクトがありました。

たぶん泣く気がする→泣く

冒頭の雰囲気で「あ、これは凄いやつだ。きっと泣かされる」という予感がありました。で、結局、舞台の後半、予想通り私は感動で泣くわけですが、思ったより遥かに強い感動のウェーブに襲われ、号泣の様相を呈してしまいました。 どのぐらいの強い泣きかというと、わかりにくい例えかもしれませんが、私史上、それを見てもっとも泣いたコンテンツである『加奈〜いもうと〜』というパソコンゲームに匹敵する量の涙を流してしまいました。これは凄いことです。私だけでなく、終盤、客席では涙をすする音がずっと響いていました。

ギャグセンス

強烈に泣かせるストーリーもすごかったですが、ギャグセンスも最高でした。舞台の幕が上がってからずっと客席では笑い声がノンストップで上がっていました。私も何度も声を出して笑ってしまいました。 いやーおもしろかったー!

キャラの魅力、ストーリーの面白さ

大勢の登場人物が全員、血肉の通った存在として感じられ、すぐに皆のことを好きになってしまいました。本当にみんないいキャラで、抱えている悩みも現代的で、大いに共感を持って彼らの生き方を味わうことができました。 冒頭、登場人物たちの間にはギスギスした冷たい空気が流れているのですが、それが主人公の働きかけによって少しずつ暖まっていき、ハートフルな雰囲気が流れ始める過程には、ずっと観ていたくなる気持ちよさがありました。 そのハートフルな雰囲気が高まったところで、登場人物たちの抱えている闇が表に現れ、話は急激に暗く悲惨な方向性に流れていきます。 そのひとつのきっかけとして牧野由依さん演じる『春日香』が食べられてしまうシーンがあるのですが、その演技はもう直視できない、耳をふさぎたくなるような凄絶なものでした。 で、そのシーン以降、舞台の上にはノンストップで暗さ、悲惨さが溢れ出してきます。ですが、その悲惨で暗い中で、愛が眩しく輝き始めるのが見えてくる舞台でした。 そこに表現されている愛はものすごい力強いものでした。もう舞台を見終わって何日も経ちますが、その強く優しい愛の印象は、舞台の美しさや、登場人物たちが交わしていた楽しい会話のひとときと共に、くっきりと心の中に思い出せます。 あ、あかん、思い出すとまた泣きそうになってくる。。。 というわけで私の心に大きなインパクトを残した舞台観劇でした。 凄いエネルギーのある舞台で、なかなか内容を消化できず、、、ていうかこれは消化するのは無理だろうと諦め、断片的ではありますが、観劇の感想を書かせていただきました。 こんな素晴らしい舞台を観ることができて本当に嬉しくありがたいです! どうもありがとうございました!

大盛況!満員御礼!佐藤友哉さん新刊『転生! 太宰治 生まれて、すみません』トークライブ

昨夜、阿佐ヶ谷LOFTで、佐藤友哉さん新刊『転生!太宰治 転生して、すみません』発売直前トークライブが行われました。私もゲストとして出席させていただきました。 立ち見の出る大盛況の中、終始ハッピー&ピースフル&いい感じなワクワク感が出ていた素敵なトークライブでした。 ここから転生太宰ムーブメントが始まる予感。。。! ゼロ年代セカンドウェーブが到来しつつあるのもひしひしと感じられました! 阿佐ヶ谷という思い出深い街で、太田克史さん、佐藤友哉さん、渡辺浩弐さんと、ご来客の皆さんと、くつろいだ雰囲気の中、楽しい時間を過ごせました。 皆さんありがとうございました!
阿佐ヶ谷LOFT楽屋にて、緊張しつつ出番を待つ私。壁の『ザ・モモタロウ』に励まされる。

『転生! 太宰治 転生して、すみません』予約・購入はこちらから↓

星海社FICTIONS『転生! 太宰治 転生して、すみません』刊行直前 佐藤友哉トークライブにゲスト出演します!

 小説家、佐藤友哉さんの9月に刊行される新刊『転生!太宰治 転生して、すみません』の刊行記念トークイベントに、私、滝本竜彦がゲストとして出演します!

星海社FICTIONS『転生! 太宰治 転生して、すみません』 刊行直前 佐藤友哉トークライブ

場所 阿佐ヶ谷LOFT
日時   8月23日(木)
OPEN 18:30 / START 19:30

前売¥2,500 / 当日¥3,000(共に飲食代別) 前売チケットは8/1(水)12時〜発売開始!

【出演】 佐藤友哉 【ゲスト】 滝本竜彦(小説家) 【司会進行】 太田克史(星海社)
詳しくはこちら↓をごらんください。 http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/95282(阿佐ヶ谷LOFTホームページ) ところで阿佐ヶ谷と言えば、十年以上も前に私が住んでいた街です。 ファウストvol.1の刊行記念パーティで仲良くなった佐藤さんめろんさんが阿佐ヶ谷に住んでいたので、私も川崎から阿佐ヶ谷に引っ越したのです。 夕暮れ時、阿佐ヶ谷LOFTのある商店街をよくぶらぶらしていたのを思い出します。 そんな思い出深い街で佐藤さんのめでたい刊行記念トークイベントに出演できるのは嬉しさマックスです!! 楽しいイベントになりそうです。ぜひ皆さん、遊びに来てくださいね。

転生! 太宰治 転生して、すみません』について

そうそう、肝心の佐藤さんの新刊『転生! 太宰治 転生して、すみません』ですが、ゲスト出演者の特典として刊行前のゲラを読ませていただきました。 偉人の現代転生ものが持つ面白さをこれでもかと味わえる最高のエンタメ小説でした。 『現代に太宰が転生』という、それだけでもう面白いのですが、その想像を遥かに超えた面白さを味わえました。それとともに、太宰治と現代日本社会について、あるいは『己の中の太宰治的性質をいかにして克服すればいいのか?』という現代人が普遍的に抱える問題について、かつてない新たな洞察を得ることができました。 そして読後には、自分の中の太宰治像が最新版にアップデートされ、力強く蘇ったのを感じました。 刊行前ということで詳しい内容には触れることはできませんが、素晴らしい力作、傑作でした。読めてよかったです。ありがとう佐藤さん!
太宰さんの墓前に手を合わせる佐藤さん

小説『NHKにようこそ!』またまた増刷! “Welcome to the NHK!” got reprinted again and again!

漫画版『NHKにようこそ!』はリバイバル連載され、原作者の滝本はアニメの山本監督たちと長野の山奥にバーベーキューに出かけ、小説版『NHKにようこそ!』にはまたまた増刷がかかった今日このごろ、皆さまいかがおすごしでしょうか?

これまで『NHKにようこそ!』について、地球のあらゆる地域の、さまざまな人種、年齢、性別の読者の皆さんから沢山の感想のメッセージをいただいてきました。 この物語を観て、読んで、『こんな風に生き、こんなことを考え、感じているのは自分だけではなかった』と知り、それによって孤独感が薄らぎ、自分の人生にプラスの変化を得たというメッセージを、世界中の多くの方が私に送ってくれました。 そんな風に、この物語が皆さんのお役に立てたのは本当にありがたく嬉しいことです。 これからも、この物語がいろいろな形で、多くの人々のお役に立っていくことを願っています!

tatsuhikotkmtさん(@tatsuhikotkmt)がシェアした投稿 –

『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』増刷!

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂば滝本竜彦の処女作です。二百パーセントの全力で書いた記憶が昨日のことのように思い出せます。 市原隼人さん、関めぐみさん、浅利陽介さん、三浦春馬さん、野波麻帆さん、板尾創路さんという凄いキャストで実写映画化もされました。 映画を観返すたびに、作品に詰まっている青春のキラキラ感や魂の燃焼感に、胸が熱くなります。 山本、能登、渡辺が演奏する『根性なし』という作中歌や、Greeeenが歌う主題歌の『Be Free』を聴くたびに気持ちが高揚します。 素晴らしい最高の作品を作っていただいた映画スタッフと俳優のみなさんに心から感謝します。ありがとうございました。 2001年に初版が出版されたので、17年前の作品ということになるわけですが、いまだに読まれ続けていることに驚きと嬉しさで一杯です。 読者のみなさん、本当にありがとうございました。みなさんのおかげで僕の人生があります。

YUI MAKINO CONCERRT LIVE 『WILL you Play with me?』最高でした!

6月9日、私は牧野由衣さんのライブを観に渋谷に行きました。 ライブ当日、私は朝から夕方までテレビ関係の仕事があり、渋谷に着いたのは開演二十分前でした。 渋谷の坂道を駆け上がると、前方に立派なイベントホールが見えてきました。今日のライブの会場である、アイア2.5シアターです。 自席に着くと隣の席にアニメ『NHKにようこそ!』の山本祐介監督がいました。スモークが立ちこめる会場で山本監督と世間話しながら開演を待ちます。 牧野由衣さんは多くのアニメに出演している有名声優です。私が原作のアニメ『NHKにようこそ!』のヒロイン、中原岬の声もしてくださっています。また長年、音楽活動を続けて高い評価を受けているアーティストでもあります。そのどちらの側面についてもファンである私としては、これからどんなライブが始まるのか、ワクワクがとまりません。 ワクワク感はステージに牧野さんが現れ、夢を追いかける人への応援ソング『song for you』を歌い始めたところから、ライブの最後まで高まり続けました。(数日が経過した今もまだ、ライブのワクワク感が残っています)

What A Beautiful World

ライブの中盤、『What A Beautiful World』のピアノ弾き語りがありました。ただでさえ超絶名曲であるものが、牧野さんの生演奏によって昇天感がましましになっており、意識がもうろうとするレベルの深い感動を味わいました。 その後、ピアニストしても活躍されている牧野さんと、ご友人のピアニストによるピアノ連弾が行われました。お二人の息のあったラフマニノフのピアノ協奏曲は未来的な響きがあり、ピアノが先進的な未来の楽器に感じられました。その一方で、ここでクラシック音楽が奏でられたことにより、このライブに過去と未来がぎゅっと詰め込まれたような、時間を超えたフィーリングが生じるのを感じました。

もどかしい世界の上で

この日のライブではアニメ『NHKにようこそ!』の後期エンディングテーマである、『もどかしい世界の上で』が歌われました。 原作者であるということを差し置いても『NHKにようこそ!』は素晴らしいアニメで、観るたびにひとつの大きな旅をするような発見と感動があります。 そのエンディングテーマ『もどかしい世界の上で』には、未知な世界、未知な他人を前にして、恐れながらも自分の心を開こうとする瞬間のためらいとときめきが、美しくパッケージングされています。その繊細な決意を励ますかのような生演奏のギターソロが、力強く会場に響いていました。

ダンサー&EDM

後半、肉感的な魅力を発する二人のダンサーがステージに現れ、最新のEDMと共に、観客に起立&手拍子を要求しました。これ以降、ライブはスタンディングパートとなり、最後の曲のハウリングまで、会場の一体感は高まり続けました。 牧野さんの声には天国的な気持ちよさがあり、一方でダンサーのダンスには肉体的な魅力があり、その両者のパフォーマンスによって、このライブにおける精神性と物質性のバランスが高いレベルで両立されたように感じました。 クラシックとEDM、水晶のような歌声と肉感的なダンス、そういった相反するものが一つのライブの中でハーモニーを奏で、未知の感動を強く生み出していました。 ライブの最終曲、ハウリングの中では、その未知の感動が客席の皆に、そして世界に広がっていくようでした。
作り上げたこの共鳴を 少しずつ大きくしていこう 確かな想いは 世界を強く揺らす
日常生活の中に埋没するとき、こういう崇高な気持ちは忘れてしまいがちなものです。ですが、そんなときも、この日のライブのことを思い出せば、またすぐ前向きな気持ちに戻れそうです。 自分でも何かを表現したくなるパワーが観客の私にもチャージされるような、素晴らしい最高のライブでした。 ありがとうございました。

富良野ラベンダーティー

ライブのあと、本ライブのスポンサーであるポッカサッポロの富良野ラベンダーティーが来場者に配られました。飲むとほっとするラベンダーの香りが素敵なお茶でした。 ポッカサッポロの富良野ラベンダーティー、Amazonに注文して飲みまくりたいと思います。

Cosmic Autumn Festival

とある冬の夜のこと。 海猫沢めろんさんにアナログゲーム大会に誘われた私は、会場であるめろんさん宅に向かった。 めろんさん宅は真っ暗で誰もいなかった。しばらくして外から帰ってきたきためろんさんは「間違えた。ゲーム大会は明日だった。今日はこれから高田馬場に行く」と言った。 小説家でありYouTuberであるめろんさんは、RAMCLEARというゲーム創作集団でアナログゲームも作っている。 めろんさんとRAMCLEARのもう一人のメンバーであるツムキ・キョウ氏は、RAMCLEARの新作アナログゲーム『ヘルトウクン』の宣伝に関する打ち合わせのため、これから高田馬場のゲームセンター・ミカドに行くとのことだった。なんとなく私も同行することになった。まもなく高田馬場に着いた。 RAMCLEARの二人を追ってゲームセンターのスタッフルームに入ると、中にはミカドの代表の方と、大塚ギチさんがいた。私は驚いた。 大塚ギチさんと言えば舞台化もされた伝説的ゲーム文学、TOKYOHEADの著者であり、私の初期作品のデザインをしてくださったデザイナーである。 ともすれば暗い重いオーラを発しがちな私の作品に、ポップなメジャー感が付与されたのはギチさんのデザインのおかげである。 ギチさんとお会いするのはずいぶん久しぶりだったが、前に見たときと同じようにおしゃれでかっこよかった。

その夜の帰り道、高田馬場の改札前で私は高石宏輔さんと出会った。高石さんと面識のあっためろんさんが、偶然に通りかかった彼を見つけて声をかけたのである。 高石さんは「声をかける」という、コミュニケーションをテーマにした本の著者である。その本には彼の経験が格調高い精緻な筆致で描かれている。それは暗い深海の底に耐圧カメラが降りていき、通常では見ることのできない闇の奥をくっきりと映し出し、読者の眼前に届けてくれるような本である。高石さんとお会いするのは初めてだったが、彼のことは前々から風の噂に聞いていて、問題意識の持ち方やそれに関するアプローチの方法などに、そこはかとない親近感を感じていた。またミカドのスタッフルームでも、高石さんの名前が皆の会話の中に出てきたばかりであった。 謎のシンクロニシティが生じつつあるのを感じた私は、その流れに乗ろうとして電車の中で高石さんをゲーム大会に誘った。翌日、めろんさん宅で行われたゲーム大会で私は高石さんや他の大勢の参加者たちと、ゲーム『ヘルトウクン』で対戦した。 その大会で私は優勝し、記念品としてヘルトウクンをゲットした。

数週間後、めろんさんと高石さんと私は、渋谷のDOMMUNEでコミュニケーションに関するトークライブをしていた。 私はその放送中、最近作っている自作の音楽、その中でも特に気に入っている、『Cosmic Autumn Festival(邦題:銀河の秋祭り)』という曲を、トークの合間にかけた。DOMMUNEの素晴らしい再生設備から響く解像度の高いキックの周波数が私の心と体を震わせた。 この曲は、とある山村のお祭り広場に宇宙船が降りてきて、地元民と宇宙人が皆でパーティをするというコンセプトのダンスミュージックである。 DOMMUNEは大好きな音楽家である小室哲哉氏がライブをした空間であり、多くの先進的なミュージシャンやDJが日々、最高の音楽をプレイしている場だ。そこで自作のダンスミュージックを再生できた私は、『クラブ的な場で自作曲をかける』というつい先日願ったばかりの夢が速やかに叶ったことを知った。 大勢のリスナーの前で、自作の音楽をかけつつ、コミュニケーションについてのトークを行った。トークの合間には高石さんの催眠セッションが行われ、そのあとで私も誘導瞑想セッションを行った。(瞑想は私が新作小説を書くために身に着けたスキルのひとつである。それに関するコンテンツは今後もこちらのホームページにアップしていくつもりである)

嬉しいことやわくわくすることが凝縮された、夢のような一連の流れであった。この意味深い夢のような新鮮な感覚を、小説を通して表現していきたい。