私は小説を書きまくってきた。十歳ぐらいに小説家になろうと決意し、それから三十年、毎日、小説のことを考えて生きてきた。
また、書いてきたいずれの小説も何かしらの意味において成功させてきた。どの作品もそれを書くことで大いに学びがあり大いに成長があった。
ここでせっかくなので、私が長年の経験から学んできた、小説を効率よく生み出すためのTIPSをいくつか公開しておきたい。
TIPS その1.ネタを生み出すためのシステムを持つ
小説と言っても無からいきなり生じるわけではない。
いや、一つ一つのアイデアは無から生じるわけだが、そのアイデアの集合として小説があるわけなので、まずはアイデアをこつこつ集めていかなければならない。小説の素材となるアイデア=ネタを集めていかなければならない。
それは寿司の材料たる魚を仕入れるようなものだ。お寿司屋さんでは店を開く前に魚を市場から仕入れ、適切な下ごしらえをして、冷蔵庫なりカウンターなりに綺麗に並べておく必要がある。小説も、いざ原稿用紙やエディタやワープロ画面の前に座ってタイピングする前に、ネタを仕入れ、それを使いやすいように保存し、必要とあらば下ごしらえしておく必要がある。
ネタの仕入先
ネタの仕入先はいくつもある。
- 自分の心の中
- 生活体験
- 本
- 映画
- 音楽
- アニメ
- ゲーム
- ネット、SNS等での他人の言葉
自分の心の中から湧いてきたものは、ネタとして高いレベルの新鮮さを誇る。
自分の生活体験は、ネタとしてそれなりに新鮮なものとして使うことができる。
本、映画、音楽、アニメ、ゲームなどなど、他人のコンテンツから得たものは、新鮮さとしてはだいぶ劣ってくるが、これは無限に仕入れることができるので十分に活用すべきである。また、他人のコンテンツから得たものを、自分の体験や空想と混ぜることで、オリジナリティがありつつも人口に膾炙しやすいネタを生み出すことができる。十分に活用すべきである。
ネット、SNS等での他人の言葉は、新鮮さとしては最低レベルになってくるが、ジャンクなうまさのようなものがあり、これも適宜、自分の作品にほどよく使えたら使ってもいい。
ネタを生み出し、キープするためのツール
上で説明した各種のネタは、そのままではただ自分の中を通り過ぎていく。使えそうなネタは、通り過ぎて行く前に、ネタ整理システムにキャプチャーすべきである。
そのようなシステムはいくつも考えられるし、同時並行していくつか持つべきである。
以下、各種のネタ整理システムについて説明する。
記憶
これは一番、よく使うシステムであるが、これだけに頼るのはヤバい。アイデアは抽象的かつあやふやなものなので、そのままではひらめいてしばらくすると、煙と消えてしまう。
また、独自性のあるアイデアというものは、本質的に不可解かつ異様なものに思えるものなので、紙に書き出して具体化しないと、無価値なものとして自分自身によって否定されがちである。しかし一度、書き出して具体化、個体化してしまえば、それは思考の世界から物質の世界へと消えざる痕跡を残したことになる。そうなれば、そのアイデアを肉付けしていくことは容易だ。
メモ帳
とりあえず記憶の中にあるアイデアはさっとメモ帳にメモする習慣を持つと良い。メモ帳は紙かもしれないし、スマホのメモ帳かもしれない。
紙であれば測量野帳はカッコいい。こんなのをポケットから取り出してアイデアをメモすれば、違いのわかる人間という感じがする。枕元に置いておいて、夢で見たアイデアを書き留めるにも便利。
定番のモレスキンのポケットサイズのヤツもいいだろう。高いが安定感がある。
日記帳
メモ帳と被るが、メモ帳は一時的なメモのためのものだとして、こっちは毎日、定期的に文章を書きためていくためのものである。
朝や晩に、その日考えたことやその日思ったことを書きとめていくといい。また、そのとき作ろうとしている作品のことや、心の中にある微細なアイデアを書き溜めていくのもいい。
メモ帳よりも大きなサイズのものが便利だろう。普通の大学ノートでもいいが、ちょっといいノート、たとえばミドリのMDノートなどを使えば気分もアガる。

各種のアイデア整理システム
日記帳の代わりに自分にあったアイデア整理システムを使うのもいい。
私は一時期、情報カードを使うPOICなるアイデア創造・整理システムを使っていた。このシステムで生み出したアイデアは非常に鮮度が高く、立体的な感じになるものが多かった。ご興味ある方はやってみるといいかも。
各種SNS
TwitterやFacebookやInstagramやらに思いついたことをメモしていくこともアイデア整理に有用だ。これは上に書いてあるシステムとは違い、ネタを他者の目に触れさせることができるという大きな利点がある。
他者の目に触れさせたネタは、自分だけが見ることができるネタよりも、ネタとして個体化しやすい。
ただ注意点として、SNS上に載せることのできるネタは、小さくまとまりがちというか、そのときの社会通念や、自分のフォロワーと同調したものになりがちである。
ネタの種類によっては、SNSに載せることによってそのネタが持つエネルギーが失われることもあるだろう。
よって、思いついたアイデアを何でもかんでもSNSに載せればいいというわけでもない。SNSは適切に使っていきたい。
ブログ
思いついたアイデアをキープする、また、積極的にアイデアを生み出すのツールの大本命としてあるのがブログである。
ブログは自分の城のようなものなので、SNSと違い、自分の個性、独自性を保った表現をすることが容易である。その一方で、SNSと同様、思いついたネタを人様の目に触れさせることができるため、アイデアを自分の中だけに留めるよりもスピーディに個体化、具体化、物質化できるという利点がある。
また、ブログに定期的に文章を書くことは、アウトプットのフローを自分の中に生み出し、それを維持し、拡大していくために、大いに役立つ。
人間は、アイデアという水を流すホースのようなものである。そのホースが通すことのできる水量は、最初はごく小さなものだ。だがそこに適切な水圧をかけて水を流し続けることで、そのホースを少しずつ太く強靭かつしなやかなものにしていくことができる。それにより、やがてコンスタントに大量の水量を流すことができるものへと変えていくことができる。
そのためのツールとしてブログは非常に非常に役立つ。
私もはじめての長編小説を書く前、ブログをやっていた。
一年ほどブログに日記やエッセイや短編小説を書き続け、それによって文章を大量にアウトプットする力を身に着けた。また自分が表現したいイメージや、沢山のアイデアを生み出し、ストックすることができた。
小説を書くためのブログを続けたことによって私が得た利益は計り知れない。
ブログはネタを生み出し、それをキープするための素晴らしいツールなのである。
まとめ
よく「小説を書きたい。だが何を書けばいいかわからない」という人がいる。それは自分が書きたいアイデアがまだ十分に溜まっていないということを意味している。
お寿司屋さんで言えば、お客さんに出したい魚が冷蔵庫の中に一匹も保存されていない状態だ。あるいは、魚は何匹か冷蔵庫の中にあるが、それが適切に下ごしらえされていない状態だ。
そんなときは、時間をかけて、小説の材料を集め、それを下ごしらえしていく作業が必要だ。
少しずつ自分の中にアイデアをため、それを自分の中で整理したり、それらを適宜、人目に触れる形に加工して、ネタとしての強度をあげていく必要がある。
これは時間がかかる作業であるが、いきなり長編小説を書こうとするよりも着実な前進が期待できる作業だ。
少しずつネタを溜めていけば、あるとき「あ、書ける!」という感じが自然に生まれてくる。そうなるまで地道にネタを集めていくことが、小説を書くための早道である。
またそのためには、自分のためのネタ製造、ネタ整理システムを作り、それを可動させていくことが役に立つだろう。
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