小説の書き方に関する小ネタを集めた本シリーズ、第三回目は『イメージする』です。(今回はなぜかですます調で書きます)
小説を創作する過程において『イメージする』ことの重要性は、あまりに自明のことなので、あえて説明するほどのことではないと思われるかもしれません。ですが、創造したいものをイメージすることは、本当に本当に、ものすごく最高最大に大事なことだし、しかも意外に軽視されているのではないかと思うので、ここでさっと説明してみたいと思います。
イメージすることの重要性
小説は『絵空事』を文章で書いて、その絵空事が持つ雰囲気や映像や感覚や感情を読者に伝えるものです。つまりまず作者の心の中に『絵空事』という伝えたいものがあって、それを文章というメディアを使って、読者の意識に伝達するわけです。
よって、文章を書く以前に、心の中の絵空事をイメージすることが、小説を組み立てる作業の基本ということになります。
文章は絵空事を伝えるための手段なわけで、二次的なものです。重要性としては、作者の心の中にある絵空事がまずいちばん大事なものであり、小説というコンテンツの本質的な部分ということになります。
文章がどれだけ上手でも、小説の本質である『絵空事』、作者の心の中にあるイメージが豊かではなければ、それは読者に伝わりません。テクニックだけあっても、それを使って表現したいものが空っぽだったら意味がないねということです。
逆に言えば、文章はあまり上手じゃなくても、心の中に表現したい絵空事が豊かにあって、それが面白いものであれば、当然、小説は面白いものになります。
どれだけ文章が上手でも、表現したい心の中の『絵空事』がつまらなければ、面白いものは書けない! ということです。
なので小説を書く際に一番、心がけるべきなのは、文章力を向上させることよりも、心の中にある『絵空事』を豊かに、面白くすることです。
どれだけ表面的な文章を直しても、つまらんものはつまらんということです。それよりも、そのコンテンツの本質的な部分を豊かに、面白くすることに意識を向けたほうが良い結果が生まれるはずです。
では小説というコンテンツの本質的な部分、つまり作者の心の中にある『絵空事』を、豊かに、面白いものにするための具体的な方法は何かというと、それが『イメージする』ということです。心の中の絵空事、つまりイメージは、イメージすることそれ自体によって自然に豊かになっていきます。
以下でイメージする具体的な方法について説明します。
イメージする方法
まず落ち着ける場所でくつろぎます。布団の中、お風呂の中、散歩中などがおすすめ。
そこで、自分がこれから書くであろう、あるいは今書いている小説で表現したい場面を心の中に思い浮かべます。
そして何かひとつ、興味深い、いい感じの想像を思い浮かべたら、その想像を心にキープし、それを観て、可能であれば五感でそれを味わいます。そのイメージを想像し、その中にある感覚、感情、雰囲気をゆったりと味わいます。
そうしているうちに、ひとつのイメージから新たなイメージへと自然に意識が移り変わっていくと思います。それはそれでいいのですが、イメージが散漫になってきたら、最初のイメージへと意識を戻します。
ここで注意点としてあるのは、できるだけ分析的な思考を止めるということです。イメージを観ているときは、そのイメージに対する分析的な思考を止めたほうがうまくいきます。なぜかというと、分析的、言語的な思考を続けながらイメージを観ると、イメージの自然な展開が阻害されるからです。
イメージを観るという作業をするときは、可能な限り、あれこれの思考は止めて、ただ心の中で映像を思い浮かべ、その映像の雰囲気を味わい、そこに流れている感情を味わい、そこにある微細な感覚を感じてください。
そしてこのイメージを観るという作業自体を、ひとつの娯楽として日常的に楽しんでください。
この作業を続けていくと、自然に、心の中にある絵空事は豊かになっていきます。
心の中の絵空事は、そこに意識を向けて、そのイメージを観て味わうことによって、心の中で自然に成長していきます。
この作業をしていると、おそらくたくさんのアイデアが浮かんできますので、イメージを観たあと、あるいは必要であればその最中に、お手元にあるメモ帳に適宜、アイデアをメモっていってください。
そのアイデアを分析的に評価するのは、このイメージを観るという作業とは別のときにやった方が効率的です。イメージを観るのと、アイデアを分析するのでは、心の使い方がまったく違ってきます。それを同時にやろうとすると心に凄まじい負荷がかかり、まったく効率的ではないので、やめた方がいいです。
イメージを観るときはただイメージを観てそれを味わう、ということだけをやりましょう。
このような方法で、小説に書きたいシーンを心に思い浮かべ、それを観て味わっていくと、そのイメージを核として小説の世界が心の中に自然に広がって成長していきます。
やがて文章によってそれを表現したくなるまで、心の中でその絵空事を大切に育んでいきましょう。
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