ヘビヘビワンダーランド製作記 その4/音楽理論

前回の記事では、Korg GadgetからAbleton Liveにインポートした曲に、サンプルをコピペして、曲を賑やかにする作業について書いた。

今日の記事では、コード進行を作ることについて書きたい。

また、コード進行について語る際に避けては通れない音楽理論についても書いてみたい。

コード進行の利点

この曲、ヘビヘビワンダーナイトの最大の問題点としてあるのが、地味という点だ。前回の記事では、地味さをなんとかするために、サンプルをたくさんトラックにコピペして、賑やかさをプラスした。

しかしクラッシュ、リバース、ハンドクラップ、といった賑やかしが増えたのはいいものの、本質的な地味さは消えなかった。

本質的な地味さの原因は、この曲にコード進行が存在していない点にある。

2つのコードを順番に鳴らせば、そこに物語性や時間の流れが生まれる。

一方、コードを進行させないとき、曲はどこにも前進せず、その場に留まり続ける。

どこにも行かず、その場に留まり続ける曲は、地味である。

だがコードが進行しないことによる停滞感にも何かしらの利点がある。

たとえば侘び寂び感や落ち着き感などなど。

実際にヘビヘビワンダーナイトでは、単純なリズムとCを鳴らし続けるベースのループの中に、一種独特の催眠的な気持ちよさが感じられる。

というわけで、コード進行によって生まれる物語性と、コードを進行させないことによる催眠性、その両者をいいとこ取りしていきたい。

そのためAメロはコードを進行させないままにしておき、サビにのみコード進行を作ってみる。

コード進行を作る

ええと、サビのメロディは、C、D、E、G〜だから、つまりここは。。。

などと、当初は頭で考えてコードを作っていこうとしましたが、なんだかうまくいきません。

結局、サビをループ再生しながら、それに合わせて適当にMIDIキーボードを弾き、メロディに合うコードを探すという原始的な手法でコード進行を作りました。

とはいえ、『適当にMIDIキーボードを弾き』といっても、完全に適当なわけではありません。

聴いて違和感のないハーモニーを生み出すには、それなりのルールに則った上で、適当に弾く必要があります。そのための方法を以下に説明します。

ダイアトニック・コードを使う

メロディに適合するコードを探すには、まずその曲のダイアトニック・コードを知る必要がある。

ダイアトニック・コードとは、とりあえずこれを使っとけばOKというコード群のことである。

ダイアトニック・コードの構成音は、すべてその曲のスケールの構成音である。よって、ダイアトニック・コードを使っている限り、スケールアウトすることはない。

スケールアウトしないということは、調子の外れた音がならないということである。

つまり、ダイアトニック・コードさえ使っておけば安心、安全なのである。

ところでスケールとは?

スケールとはその曲に使われている音のセットのことである。多種多様な音のセットが存在しているが、大きく分けてメジャー・スケールとマイナー・スケールの二つのセットに大別できる。

ところで、スケールとは音のセットということだが、、、

そもそも音とは何か? 

音は音波から生じる。音波とは、空気の振動によって作られた波のことである。

音波は波なので、振動周波数というパラメータを持っている。

特定の振動周波数を持つ音に名前を振っていったものが音名である。

国際標準化機構、ISOによって決められた国際基準値では、一秒間に440回振動する音波から生じた音にAという名前が当てられている。

Aの440Hzを二倍した880Hzの振動数の音もAと呼ばれる。

なぜかはわからないが、周波数比が二倍の関係にある音は、人間の心にとって、その高さは違うものの、同様の性質を持った音として認識される。よって、440Hzの音と、880Hzの音には同様のAという記号が当てられている。

440HzのAと、880HzのAは、1オクターブ違いのAと呼ばれる。

同様に、880Hzの二倍の周波数である1760Hzの音もAであり、さらにその二倍の周波数である3520Hzの音も、さらにその二倍の7040Hzの音もAである。

また逆に、440Hzの二分の一の周波数である220Hzの音もAであり、その半分の周波数である110Hzの音もAである。さらにその半分の55Hz、27.5HzもAである。

さて、このようにして決まったAとAの間、つまり1オクターブを、数学的に十二等分すると、十二平均律を得ることが出来る。

十二平均律とは、一オクターブを十二分割して作った十二個の音からなる音楽システムのことである。それは今現在、通常の作曲においてもっとも使用頻度の高い音楽システムである。

十二平均律で使われる十二個の音には、以下のように記号が割り振られている。

A A# B C C# D D# E  F F# G G#

G#の右隣には、左端のAの1オクターブ上のAがやってくる。そしてまたA#、B〜と続いていく。

これが音名である。

さて、この音名をある特定の順番で並べたものがスケールである。

上でも書いたが、スケールは、メジャー・スケールとマイナー・スケールに大別できる。

ヘビヘビワンダーナイトはCメジャー・スケールの曲であるし、メジャー・スケールこそが、スケールの基本だ。よって今回はメジャー・スケールについて考えてみたい。

メジャー・スケールとは何か?

スケールにはルート(根音、第一音)と呼ばれる音がある。

スケールのルートは12個の音(A A# B C C# D D# E  F F# G G#)の中から好きなものを選ぶことができる。

たとえば、ルートにCを選んだメジャー・スケールをCメジャー・スケールと呼ぶ。ルートがA#である音をA#メジャー・スケールと呼ぶ。

メジャー・スケールには7つの音が含まれる。その7つの音はそれぞれ特定の距離のパターンで並んでいる。

一つの音と音の間には距離、幅があるのだが、その幅の最小単位を、半音と呼ぶ。

A A# B C C# D D# E  F F# G G#

この音の列で、隣り合っている記号の間にある幅が半音である。

たとえばCとC#の間の幅は半音である。EとFの間の幅は半音である。

また、半音二つ分の幅を全音と呼ぶ。

たとえばCとDの間の幅は全音である。D#とFの間の幅は全音である。

さて、メジャー・スケールはルート(根音、最初の音)から第8音まで、以下のようなパターンの幅を持った並びになっている。

1全音2全音3半音4全音5全音6全音7半音8

各音の間の幅がこのようになっている音の並びがメジャー・スケールなのである。

よって、Cメジャー・スケールの2つ目の音はDである。なぜならメジャー・スケールの第二音は、第一音から、全音分、つまり半音二つ分、離れている場所にあるからである。

同様に他の音を探し、見つけた第一音から第七音までを並べると『C D E F G A B』となる。この音の並びがCメジャー・スケールである。

同様に、Dメジャー・スケールを割り出してみる。

Dメジャー・スケールの第一音はDである。

Dから全音離れた音、Eが第二音である。

Eから全音離れた音、F#が第三音である。

F#から半音離れた音、Gが第四音である。

Gから全音離れた音、Aが第五音である。

Aから全音離れた音、Bが第六音である。

Bから全音離れた音、C#が第七音である。

よってDメジャー・スケールの構成音は『D E F# G A B C#』となる。

ダイアトニック・コードの作り方

音名とスケールの説明が終わったので、次はダイアトニックコードの作りかたを説明したい。以下のような記号操作で、ダイアトニックコードを表すコードネームを得ることが出来る。

  1. スケール構成音をルートから7つ並べる
  2. スケール構成音の左から2つ目、3つ目、6つ目、7つ目の記号に『m』を付ける。
  3. さらに7つ目の記号に(♭5)を付ける

Cメジャースケールの構成音をルートから7つ並べると『C D E F G A B』となる。この記号列の左から2つ目、3つ目、6つ目、7つ目の記号に『m』を付け、さらに7つ目の記号に(♭5)を付けると、『C Dm Em F G Am Bm(♭5)』となる。これがCメジャー・スケールのダイアトニック・コードである。

Dメジャー・スケールであれば、そのダイアトニック・コードは『D Em F#m G A Bm C#m(♭5)』となる。

このとき、CとかDmとか、F#mなどという記号は、音名ではなく、コードネームを表している。

ところでコードとは?

コードの基本である三和音は、三つの音から構成されている。

コードの1つ目の構成音、つまり最も低い音をそのコードの第一音(ルート)と呼ぶ。

2つ目の構成音をそのコードの第三音(サード)と呼ぶ。

3つ目の構成音をそのコードの第五音(フィフス)と呼ぶ。

なぜ第三音、第五音と呼ぶかというと、度数というものが関わってくる。

度数とは半音を最小単位として、音と音の間の距離、すなわち音程を数えるための単位である。

以下、Wikipediaより。

1度……同じ音の高さを完全1度、または同度、あるいはユニゾンと呼び、半音が1個分の幅を増1度と呼ぶ。
2度……半音が1個分の幅を短2度と呼び、半音が2個分の幅を長2度と呼ぶ。
3度……半音が3個分の幅を短3度と呼び、半音が4個分の幅を長3度と呼ぶ。
4度……半音が5個分の幅を完全4度と呼び、半音が6個分の幅を増4度または三全音(トライトーン)と呼ぶ。
5度……半音が6個分の幅を減5度または三全音(トライトーン)と呼び、半音が7個分の幅を完全5度と呼ぶ。
6度……半音が8個分の幅を短6度と呼び、半音が9個分の幅を長6度と呼ぶ。
7度……半音が10個分の幅を短7度と呼び、半音が11個分の幅を長7度と呼ぶ。
8度……半音が12個分の幅を完全8度、またはオクターブと呼び、ここまでの音程を単音程と呼ぶ。そして、結合辞はここから再び1度から7度までを循環する。

コードの根音(ルート)から三度離れた場所にある音を、そのコードの第三音(サード)と呼ぶ。

コードの根音から五度離れた場所にある音を、そのコードの第五音(フィフス)と呼ぶ。

ルート、サード、フィフスと重ねた音が三和音(スリーコード)である。この三和音がコードの基本となる。

さて、コードは主に、メジャー・コードとマイナー・コードに大別される。

メジャー・コードとマイナー・コード

mが付いたコードは、マイナーコードを表している。マイナーコードは、第一音と第三音の音程が短三度である(半音三つ分離れている)コードである。マイナー・コードは暗い雰囲気を持っている。

mが付いていないコードは、メジャーコードを表している。メジャーコードは、第一音と第三音の音程が長三度である(半音四つ分離れている)コードである。メジャー・コードは明るい雰囲気を持っている。

また、コードには(♭5)という記号がつくことがある。

フラット・フィフス

フラット・フィフス、(♭5)とは、第一音と第五音の間の距離が、通常の第五音よりも半音分狭くなっているコードを表す記号である。

(♭5)がついていない通常のコードでは、第一音と第五音の音程は、完全5度(半音7個分)である。

(♭5)が付いているコードの第一音と第五音の距離は、減五度(半音6個分)である。

以上の説明を踏まえた上で・・・

Cメジャー・ダイアトニック・コードを使って、ヘビヘビワンダーナイトにコード進行を作る

この曲はCメジャー・スケールの曲なので、『C Dm Em F G Am Bm(♭5)』がダイアトニック・コードとなる。

だが、7つ目のダイアトニック・コードであるBm(♭5)は、めったに使うことはないので、こいつに関しては存在を忘れていい。

ということで、この曲で使えるコードはC Dm Em F G Amの6つということになる。

どのコードも、指三本で、白鍵を一つ飛ばしに押さえれば弾くことができる。

ドミソでC。

レファラでDm。

ミソシでEm。

ファラドでF。

ソシレでG。

ラドミでAm。

これだけわかれば、上の長々しい音楽理論的な説明は全部忘れても、特に問題ない。(少なくともこの曲に関しては)

サビのメロディをループ再生しながら、ひたすら指三本で一つ飛ばしの鍵盤を押さえ、合うコードを探していく。

そして、「お、これはいいな!」と思ったものを少しずつ録音していく。その作業の果てに、サビのワンループ分のコードが録音できたら、それをピアノ・ロール上で修正する。

タイミングを少し修正したり。(コードはクォンタイズをかけて完全にタイミングを修正するより、ある程度、手弾きのタイミングのズレを残しておいたほうがいい)

響きが重くなりすぎないよう適宜、コードの構成音を抜いたり。(コードは構成音を全部鳴らさなくてもいいのである)

また、七度の音、セブンスを足してみたり、三度を四度に上げてsus4というコードにアレンジしてみたり、などなどと言った細かい修正を加えてみた。

結果、C CΔ7 Dm/C Em/C Am Gsus4 Gというコード進行ができた。一見、複雑そうに見えるが、これはC C Am Gという三和音のダイアトニック・コードが基本となって作られたものだ。

聴いてみると、かなりいい感じのコード進行のように思う。

このコード進行をつけたら、曲にいきなり壮大な物語性が生まれた。

この壮大さは、もはや曲名を変えざるを得ないレベルだ。

私は『ヘビヘビワンダーナイト』という曲名を、『ヘビヘビワンダーランド』に変える決定をくだした。

というところで、次回に続く。。。。

次回で製作記は終わりです!

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