昨夜、新曲が完成した。題して『ヘビヘビワンダーランド』
たくさんの蛇がうねうねと気持ちよく這いずりまわる神秘の楽園、あのヘビヘビワンダーランドを表現した曲である。
さっそくTwitterで公開したところ、Korg Gadgetユーザーの総本山、gadget-Junkies.net管理人のくらんけ氏より以下のレスポンスが。
拝聴しました!なんともピースフルな曲ですね。意匠を凝らされている音色もさることながら、穏やかなAメロと、雄大で伸びやかなサビの対比もいい…お忙しいかと存じますが、この曲の制作過程をブログにアップしてくださると、すべてのDTMユーザーにとって有意義だと思います! ( ^▽^)
— くらんけ@Gadget-Junkies.net (@Gadget_Junkies) May 27, 2019
ありがたい感想(いつもありがとうございます!)とともに、制作過程をブログにアップしてみてはという提言が。
面白そうであるし、自分の制作過程を文章にして客観視してみるのは、今後の音楽制作に役立ちそうである。
また、これからDTMや作曲を始めようという方や、Korg GadgetとAbleton Liveのような他のDAWを連携させて使おうという方の参考になる記事が書けるかもしれない。
というわけで、「ヘビヘビワンダーランド」制作記録を書いてみます!
この曲の成り立ち
まずこの曲がどういう変遷を経て今の形になったのかを簡単に説明させていただきます。
この曲は何度かのアップデートを経て、今の「ヘビヘビワンダーランド」という形になりました。
一番最初の形は、SoundCloud未アップロードのこれ↓です。
ヘビヘビワンダーナイト Primitive mix
(この時点で曲名は「〜ランド」ではなく「〜ナイト」)
非常に荒々しいが、その分、この曲のコアとなるアイデアがくっきり感じられる、原石のような曲である。
次に、Korg Gadgetのみで作ったこの曲を、Ableton LiveというDawに移し、そこで各種の調整とエフェクトを施し、出来上がったのがこれ↓である。
若干、聴きやすい音になり、展開にメリハリもついたが、この段階ではまだ曲のアイデアスケッチという感が強い。
ヘビヘビワンダーナイト Ableton Live mix
この曲↑を、さらに引き続きAbleton Liveを使って、一つの成立した曲となるまでこつこつとアップデートし、それに伴って曲名も内容にふさわしく変えたものが、一番上で紹介した「ヘビヘビワンダーランド」である。
私的には壮大かつキャッチーかつ深遠な曲に仕上がったと感じており、深く満足している。
ではこの「ヘビヘビワンダーランド」最終形態に至るまでの各作業工程を詳しく説明していきたい。
最初に、Korg Gadget上で曲のコアを作る
と言っても、そもそもこの曲を作るつもりはなかった。
ゴールデンウィークに友達の家に遊びに行って、そこで暇つぶしのためKorg Gadgetで一緒に作曲してみようということになり、そこで成り行き上、たまたま出来上がったものである。
だが、成り行き上たまたま出来たものとはいえ、何かしらの手順を踏んで作られたものに違いないから、その手順を思い出して書き出してみる。
1.使うGadgetを選ぶ。
友人との以下のような問答によって曲に使うGadgetを決めていった。
「ドラム用のGadgetがいくつかあるけど、どれにする?」
「こっちの青い方」
「シンセは、キレイで可愛いなやつ(Chiang Mai)か、気持ちいいやつ(Phoenix)か、力強いやつ(Brussel)か、どれがいい?」
「可愛いやつと、力強いやつ」
「ベースは渋いやつ(Dablin)と、怖いやつ(Miami)があって、どれがいい?」
「渋いやつ」
こうしてドラムにLondon、シンセにChaing MaiおよびBrussel、そしてベースにDublinを使うことが決まった。また、これだけだと味気ないので、特殊効果用にAmsterdamも使うことにした。
このように、使うGadgetをいくつか選ぶだけで、曲の基礎はなんとなく見えてくる。
Korg Gadgetの良さは、Gadgetを選ぶことから曲を作っていけることだ。
Korg Gadget上の音源であるGadgetは仮想的な楽器であり、イメージを掻き立てるグラフィックを持っている。そのため、Gadgetを選ぶだけで、なんとなく曲想が湧いてくる。
また、各GadgetにはKorg公式サイトにて、創作意欲を掻き立てる紹介文がついている。
Kiev
Advanced Spatial Digital Synthesizer工場地帯に隠されていた秘密兵器とも言えるイエロー・ボディが特徴のシンセサイザー・ガジェットです。有機的でスペーシーなサウンドを合成する4つのオシレーターによる「ベクター・シンセシス」をフィーチャーし、空間をねじ曲げるような不思議な“ワープ”サウンドをタッチ・パッドで直感的にコントロールできます。
このKiev(上の画像の右下にある黄色いGadget)の紹介文など、「なんだかよくわからないが、凄そうなもの」という感がひしひしと伝わってくる名文である。
これら紹介文や、Gadgetのグラフィックを見て、なんとなく良さそうというGadgetを選び、それをトラックにインサートすることで、実際になんとなくいい曲を作ることができる。
私のおすすめGadget
ここでまったくの私見であるが、私のおすすめGadgetを紹介したい。
London(ロンドン)
使いやすいドラムマシン。気持ちいい音が沢山入っており、これを適当に鳴らすだけで立派なリズムトラックが完成する。
Chaing Mai (チェンマイ)
可愛らしい音がなる、可愛らしいGadget。
VPM(バリアブル・フェーズ・モジュレーション)シンセシスをフィーチャーしたポリフォニック・シンセサイザー・ガジェットです。
と公式サイトには紹介されている。このVPMシンセシスという何かの必殺技のような名前のものは、どうやらFM音源に似た何かのようであるが、難しいことは気にせず、プリセットから気に入った音を選んで鳴らせば良い。
Phoenix(フェニックス)
Prophet-5という有名なアナログシンセを模して作られたらしい、ヴァーチャルアナログ・シンセ。
Gadgetに内蔵されているコード機能をオンにして、適当な鍵盤を続けて押すだけで、感情を揺さぶる、心の琴線に触れる音が出る。
作曲を始めた当初、私はこのGadgetを起点として曲想を得ていた。
Korg Gadget Recommendsに選出された私の曲、Cosmic Autumn Festivalも、このPhenixのコード演奏を起点として作られたものである。
その他にもさまざまな心躍るGadgetが、Korg Gadgetには装備されている。
Mac版、iOS版、共に試用版があるので、気になる方は、まずはそれを使ってみるのもおすすめだ。
上で紹介したCosmic Autumn Festivalの原曲もKorg Gadget for Macの試用版で作ったものである。
ちなみに試用版を使う際、nanoPadやnanoKey等のKorg製MidiコントローラーをMacやiPhoneに繋ぐことで、使えるトラック数やGadgetの数の制限がいくつか解除される。
これらKorg製Midiコントローラーは安価であり、使い出がよく、しかもおまけとして多数の音源やサービスがバンドルされている。おすすめアイテムです。
2.リズムを打ち込む。
さて、使うGadgetを選んだら、次はリズムを打ち込もう!
いきなりメロディや、ベースを打ち込んでももちろんOKであるが、基準となるリズムがあった方がやりやすいのではないかと思います。
友人にiPhoneを渡し、適当にリズムを打ち込んでもらいました。友人はGadgetを初見だったのですが、非常にわかりやすいUIのため、すぐにそれらしいリズムができてきました。
私がキックを4つ打ちっぽく修正し、リズムトラック、完成です。
3.メロディ、ベースを打ち込む
また友人にiPhoneを渡し、適当にメロディを打ち込んでもらい、それを私が微調整する、という工程を繰り返して、メロディとベースを完成させました。
メインのサビのメロディは、Brusselのスケール機能をオンにして、Ionianスケールを選び、白鍵だけが表示されるようにし、さらに鍵盤を一オクターブのみ表示するようにした上で、iPhone上で鍵盤をなぞることでリアルタイム入力してもらいました。
こうすると狭いiPhone上でもメロディが弾きやすくなります。
また、この弾き方により、うねるような蛇っぽいメロディが完成しました。
ちなみにスケール機能とは、これを使うだけで、音楽理論など知らなくとも、どんな音を鳴らしてもスケールアウトすることがなく、ちゃんと曲に調和して聴こえる音が自動的に選択されて鳴らされるという機能です。超便利!
4.Amsterdamで効果音を付ける
Korg Gadgetで曲を作る場合、私はだいたい100%、このAmsterdamというGadgetを使います。
これは大量の効果音のサンプルを簡単に鳴らすことができるGadgetで、これを使えば曲にリッチさを手軽にプラスできます。適当にノリでプリセットを選び、適当に録音すればOK。
5.曲の構成を作る
次に、曲の構成を作ります。これまでの作業で、5つのトラックに、ループがひとつずつできたわけですが、これを縦に並べて曲にしていきます。
まずはイントロですね。イントロということで音は少なくして、ドラムだけにしましょう。
次にAメロ。クラブミュージックではビルドアップと呼ばれている部分です。これはイントロのドラムの上にに、ベースとアルペジオを重ねて作ります。
その次にいきなりサビ。クラブミュージックではドロップと呼ばれている部分です。いかんせん曲のパーツが少ないので、Aメロの次はもうサビに入ります。ドラム、ベース、アルペジオの上に、Brusselで作った蛇っぽいメロディを重ねます。
さらに要所要所で、Amsterdamで作った効果音を入れたり抜いたりして、完成!
6.曲名を考える
今回は友人と二人で作ったということで、曲名も相談して決めました。
ああでもないこうでもないと相談。。。
「ヘビヘビワンダーナイト」という案に至るまで紆余曲折ありました。
ですが、メロディの蛇っぽさや、その日の昼間、「はちゅカフェ」という爬虫類カフェに行き、そこで蛇を首に巻いてもらった体験などを加味し、最終的にヘビヘビワンダーナイトに決まりました。
曲名を付けてファイルを保存し、Wavを書き出し、Dropboxを使って友人と共有しました。
これにてKorg Gadgetを使った突発的な作曲セッションは終了です。
実作業時間は一時間弱と言ったところでしょうか。その成果物がこれ↓になります。もう一度お聞きください。
ヘビヘビワンダーナイト Primitive mix
あ〜楽しかった。やはり何かしらものを作る遊びというのは、達成感があり、非常に面白いものがあります。
今はNintendo SwitchでもKorg Gadgetをプレイできるそうです。ぜひKorg Gadgetでの音楽セッション、みなさんも楽しんでみてください。
さて、このようにしてKorg Gadget上で曲のコアを作ったわけですが。。。。
この次の工程は・・・
Gadgetで作った曲をAbleton Liveで開く
ですが、ここでブログ執筆の時間切れです。
今日はここまで。続きはまた明日。またね〜。