水上悟志 戦国妖狐8 第45回『幽界』に見る複人格統合のワーク

人間の心の中は、通常、いくつもの人格に分裂している。その分裂したそれぞれの人格を、複人格、サブパーソナリティと呼んでおく。

なんらかの作業がしたいのに、どうしてもそれをすることができない。
これこれの目標に向かって活動したいのに、なぜかやる気がでない。

こういった、誰もが感じるジレンマは、だいたいにおいて、副人格のそれぞれがバラバラの目標に向かっているために生じる。

主導的な人格がこれこれの目標を達成しようとしても、副人格が抱いている目標がそれと真逆であるとき、副人格は主導的な人格の目標達成を妨害する方向に動く。結果として、やりたいことがやれない、あるいはやりたくないことをやってしまうという現象が起きる。

このような人格内での葛藤に対して、二つのアプローチがある。

1つ目のアプローチは努力と根性で無理やり、その葛藤を乗り越えるというものである。これは短期的には目標達成という結果を出すことがあるが、長期的に見たときマイナスに働く。なぜなら、主導的な人格が、副人格を無視して、ひとつの目標に向かったとき、副人格は心の中でより頑なに、それに反する目標に向かう力をつけるからである。

心の中の葛藤を無視し、副人格を力で押さえつけ、努力と根性によって、一つの目標に向かったとき、主導的人格と副人格の間にある葛藤はより大きくなり、それらの間にある分裂はより大きくなっていく。そしてしまいにはどれほどの努力と根性を出しても、心の中の葛藤を無視することができなくなり、心を機能的に働かせることができなくなる日が来る。

そのような状態は燃え尽き状態とか、スランプ状態などと呼ばれる。

取り返しがつかないレベルで、そんな状態になってしまったとき、つまり心の中での自分同士の戦いが限度を超えて大きくなってしまったときは、以下に書く2つめのアプローチによって、自分同士を仲直りさせるしかない。

2つ目のアプローチは、心の中にある人格間の葛藤を、話し合いによって融和し、ばらばらになっていた各種の人格を一つに統合することである。その話し合いは心の中で行われるため、その作業は一種の瞑想的な活動となることが多い。

そのような瞑想的作業による副人格の統合の具体例が、今、私が楽しんで読んでいるコミック、戦国妖狐の8巻に収録されている第45回『幽界』に描かれていた。以下、さっと紹介する。

心の中に千の闇を飼う千夜は、闇との対話に長けたしんすけの導きに従って、人格の統合作業を始める。

畳に横になり、まずは全身をリラックスさせる。深く脱力したら心の焦点を、副人格がいる幽界に向かわせる。そして幽界にて副人格と対話する、という流れである。

また、その対話の作業のあとには、町を散歩してグラウンディング、つまり地に足をつけて来いという趣旨のアドバイスがしんすけからなされる。

この一連のシーンは実際に機能しそうなワークとして現実的に描かれており、それでいてファンタジックな冒険活劇としてのコミック本編とシームレスに融合している。

現実的な癒やしの具体的プロセスを、ファンタジックな娯楽ストーリーに融合する手腕に、読んでいて大いに感銘を受けたのでここにメモしておきます。

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