百万畳ラビリンス

めちゃくちゃ面白い!

作者はComic LOの美麗かつクールな表紙イラストでおなじみの、たかみち氏。

ある日、気がつくと、主人公は無限に続く木造建築の中で目覚める。なぜ自分がここにいるのかわからないまま、どこまでも畳が続く建築物の中を主人公は探索していく。

映画、CUBE的なシチュエーションを和風にし、よりゲーム的にして、さらにほのぼの風味にした感じの話。

主人公の、世界に対する固定観念や先入観から自由であるという、アウトサイダー的性質が心地よい。

アウトサイダーであるがゆえに、世界や社会からまったく理解されず、常に浮いてしまう存在ではあるのだが、それでいて世界にも社会にも憎しみを抱いておらず、ただ自分の楽しみの追求に忠実というサッパリした性格。極めて魅力的な主人公の造形である。こういう人と友達になりたいものである。

上下左右や空間の繋がりがねじ曲がり、ループしているこの世界の構造はまさにゲーム的で、そのゲーム的世界の構造やルールがしっかり描写され、それが冒険の中で少しずつ開示されていくプロセスに、読んでいて強いワクワク感を覚える。

畳がどこまでも続いていくというヴィジュアル・イメージに、筒井康隆の『遠い座敷』とかで描かれたような、日本SFに古くからある集合無意識的なヴィジョンが表現されており、その世界に郷愁や居心地のよさを感じる。

また、読んでいて、脳の普段使っていない場所を刺激されるような、新世代の娯楽作品が持つ、超次元的な雰囲気を強く感じる。

美しい絵、引き込まれるストーリー、魅力的なキャラを追っていくうちに、この自分の日常的な意識にも、何か新しい変化が生じそうな、娯楽的であり啓発的である漫画。

とてもいいもの読みました!

水上悟志 戦国妖狐8 第45回『幽界』に見る複人格統合のワーク

人間の心の中は、通常、いくつもの人格に分裂している。その分裂したそれぞれの人格を、複人格、サブパーソナリティと呼んでおく。

なんらかの作業がしたいのに、どうしてもそれをすることができない。
これこれの目標に向かって活動したいのに、なぜかやる気がでない。

こういった、誰もが感じるジレンマは、だいたいにおいて、副人格のそれぞれがバラバラの目標に向かっているために生じる。

主導的な人格がこれこれの目標を達成しようとしても、副人格が抱いている目標がそれと真逆であるとき、副人格は主導的な人格の目標達成を妨害する方向に動く。結果として、やりたいことがやれない、あるいはやりたくないことをやってしまうという現象が起きる。

このような人格内での葛藤に対して、二つのアプローチがある。

1つ目のアプローチは努力と根性で無理やり、その葛藤を乗り越えるというものである。これは短期的には目標達成という結果を出すことがあるが、長期的に見たときマイナスに働く。なぜなら、主導的な人格が、副人格を無視して、ひとつの目標に向かったとき、副人格は心の中でより頑なに、それに反する目標に向かう力をつけるからである。

心の中の葛藤を無視し、副人格を力で押さえつけ、努力と根性によって、一つの目標に向かったとき、主導的人格と副人格の間にある葛藤はより大きくなり、それらの間にある分裂はより大きくなっていく。そしてしまいにはどれほどの努力と根性を出しても、心の中の葛藤を無視することができなくなり、心を機能的に働かせることができなくなる日が来る。

そのような状態は燃え尽き状態とか、スランプ状態などと呼ばれる。

取り返しがつかないレベルで、そんな状態になってしまったとき、つまり心の中での自分同士の戦いが限度を超えて大きくなってしまったときは、以下に書く2つめのアプローチによって、自分同士を仲直りさせるしかない。

2つ目のアプローチは、心の中にある人格間の葛藤を、話し合いによって融和し、ばらばらになっていた各種の人格を一つに統合することである。その話し合いは心の中で行われるため、その作業は一種の瞑想的な活動となることが多い。

そのような瞑想的作業による副人格の統合の具体例が、今、私が楽しんで読んでいるコミック、戦国妖狐の8巻に収録されている第45回『幽界』に描かれていた。以下、さっと紹介する。

心の中に千の闇を飼う千夜は、闇との対話に長けたしんすけの導きに従って、人格の統合作業を始める。

畳に横になり、まずは全身をリラックスさせる。深く脱力したら心の焦点を、副人格がいる幽界に向かわせる。そして幽界にて副人格と対話する、という流れである。

また、その対話の作業のあとには、町を散歩してグラウンディング、つまり地に足をつけて来いという趣旨のアドバイスがしんすけからなされる。

この一連のシーンは実際に機能しそうなワークとして現実的に描かれており、それでいてファンタジックな冒険活劇としてのコミック本編とシームレスに融合している。

現実的な癒やしの具体的プロセスを、ファンタジックな娯楽ストーリーに融合する手腕に、読んでいて大いに感銘を受けたのでここにメモしておきます。

水上悟志フェア

先日、超絶傑作漫画『スピリット・サークル』を読んで以来、その作者の水上悟志氏の漫画をよみふけっている。

いまのところ読んだのはこの作品。

  • 戦国妖狐
  • 宇宙大帝ギンガサンダーの冒険
  • 放浪世界

どれも驚くべき面白さである。それぞれ一言コメントを書かせていただく。

戦国妖狐

戦国を妖怪の狐(凄い可愛い)とその仲間たちが旅し、悪と戦うバトル漫画である。ものすごく面白く、キャラが魅力的である。こういう漫画は無限に読み続けたい。作品の中央部に強くあるのが感じられる悟り志向と、キャラ萌えおよびバトルの気持ちよさのバランス感覚が素晴らしい作品。こういうのが読みたかった!

宇宙大帝ギンガサンダーの冒険

ミヒャエル・エンデの『鏡のなかの鏡』(私のオールタイム・ベスト小説)を思い起こさせる多次元的短編集である。

各短編のモチーフが他の短編につながっていて、読み進むごとに世界の立体的なつながりが脳内に構築され、意識が拡張されるがごとき気持ち良さが味わえる。作中、魔神と少年が旅をするシーンがまた『鏡のなかの鏡』を思い出させる。思えばミヒャエル・エンデも悟り志向の作家であった。

放浪世界

表題作『虚無をゆく』の素晴らしさが胸を打ち、その鮮烈なイメージが強く心に残る作品。似たモチーフの作品として、映画『ダーク・シティ』や上遠野浩平の小説『僕らは虚空に夜を観る』が思い浮かぶ。最後の『安眠室』のシーンには、最良のSF作品のさらにその極一部だけが持っている、まだ名前の付けられていないあの感覚が強く漂っている。具体的にはグレッグ・ベアの『鏖戦』に似たようなフィーリングが描かれていたように思う。それは切なさと安らぎと郷愁と、時間を超えたセンス・オブ・ワンダーが渾然一体となった感覚です。おすすめ!

おすすめコミック:スピリット・サークル

輪廻転生がテーマの漫画。

スケールの大きさ、センス・オブ・ワンダーの強さ、キャラの魅力、ストーリーの面白さ、どれをとっても素晴らしい良さがあり、それが複雑に絡み合って一つの傑作漫画を構成している。

全六巻という漫画としてはそれほど長くない巻数の中に、信じられないほど濃縮されたスープのような奥深い面白さ、感動、涙、興奮、高揚感、そしてそれに接したとき涙を流さざるを得ない、時間を超えた愛が詰まっている。

『前世を思い出し、急激な意識の拡張と、それに伴う心の底に眠っていた未解決の感情の溢れ出す奔流に呆然としながら滂沱の涙を流す』というシーンが、強いリアリティを感じられるものとして感動的に描かれている。

作中で手を変え品を変えテーマを変え、何度も繰り返されるその描写を味わうごとに、読者としての自分の意識までもが、前世方向に向かって、あるいは並行宇宙方向に向かって超次元的に拡張しそうになる。そのような精神変容能力、いわば読むドラッグ的な力すら作品に内包されているのが感じられる。

娯楽の新世代を感じさせる、先進的であり、高次元的であり、それでいて高い完成度と読みやすさを誇る漫画。

キャラも皆、可愛く魅力的です。

凄いなー! マジで凄い!!

ちなみに同様のテーマを扱った作品として思い浮かぶのが、ロバート・A・モンローの『魂の体外旅行』である。輪廻転生というテーマに興味を持たれた方はこちらも激烈に面白い本なので、チェックしてみることをおすすめする。

今週を振り返って

今週読んだものいろいろ

『空気』で人を動かす 何かの集団のリーダー、教師、などなどに有用かつ実用的な本。

ワン・シング 最も人生の目的にかなった一つの行動に注力しつつ、人生のバランスを取るべしという本。

アウトプット大全 著者のアウトプット量にとにかく驚かされ、自分もそうなりたいと感じた。

スピリット・サークル 超超傑作漫画。クラウド・アトラスや、ヘミシンク開発者のロバート・A・モンローの著書『魂の体外旅行』的なテーマを、凄まじい面白い娯楽に仕上げている。笑えて泣けて、読むだけで意識が広がる本。最後の高次元存在たちの描写も素晴らしい!

あとで個別にレビュー書きたい。

今週のアウトプット

えーと、ブログ記事いくつかと、作りかけの音楽少々。音楽はGadget Sonic 2018に応募する予定です。

Gadget Sonic 2018とは、Korg Gadget という音楽制作ソフトウェアの非公式ユーザーコンペティションです。Gadgetユーザーであれば誰でも参加可能! ユーザーの手でこんな大会を作り上げるだなんて、なんだか楽しそうなことが始まっています。

Korg GadgetはiPhoneがあればすぐ使えて、簡単にさっと音楽を作ることができるので、ぜひ皆さんも参加されてみては。優秀作には豪華賞品もあるそうです!

今週の活動

今週というか先週の土曜ですが、友達のホームパーティにお招きされ、日曜は友達のライブに行き、火曜は学校の夏の課題のために作家、滝本竜彦のインタビューをしにきた名古屋の中学生と会って作者同伴の聖地巡礼生田の旅をし、水曜は専門学校で講師をしたあと、劇団クロジの劇『いと恋めやも』を観劇しました。

あとでTatsuhikoTakimoto.com に感想を書きますが、『いと恋めやも』は観劇中に五回ほど感動して泣いちゃいました。私だけでなく観客席ではずっと笑い声や涙をすすり上げる音が耐えない状態でした。本当に凄まじく感動的な劇でした。

そして観劇の感動が冷めやらぬまま、翌日は佐藤友哉さんの新刊『転生! 太宰治 転生して、すみません』発売直前トークライブにゲスト出演。太田さん佐藤さん渡辺さんと滝本竜彦というゼロ年代的ファウスト的な面々とのトークは最高に楽しかったです。

翌日の金曜はMPの低下により、三時間ぐらいiPhoneで、ひたすらゾンビを倒すゲームをしてしましましたが、瞑想したりなんなりしているうちになんとか気分をセンターに戻すことができました。

ということで私的にはかなりアクティブな一週間でした。自分の仕事が少し途切れてしまったり、アウトプット量が少ないんじゃないかという気もしますが、ヘロヘロに疲れながらも、まあまあよくできました。

改善点はiPhoneゲームをやめることだな! 一つでもインストールすると十時間ぐらいが無くなってしまううえに、頭が重くなり明晰度が下がる。

私は疲れたりして意識レベルが低下すると、iPhoneゲームをやってしまいがち。そうするとより意識レベルが低下し、明晰度が下がり、さらにiPhoneゲームやらジャンクフード食いやら無駄なネットサーフィンやらを始めがち。

前もって今週の予定を見て、疲れそうな日はiPhoneゲームや意識レベルが下がりそうなアクティビティを始めてしまわないよう、予め気をつけておいた方が良さそうだ。でも『予め気をつける』ってどうやればいいんだどう? カレンダーに、『意識レベル低下に注意! iPhoneゲームに注意!』って書いておくか。

土日の記録

土曜:友達のホームパーティ

シェアハウスに住む友人のホームパーティに出席する。

住人の一人がプロの料理人とのことで、その方の作る凄まじく美しく美味しい料理がおしげもなく振る舞われた豪勢なパーティであった。

その料理をいただくことによりHPとMPとSPが全回復した上、各種ステータスにプラスの補正がついたのを感じた。ごちそうさまでした。

大勢の魅力的な人たちとお話することができ、いい刺激を得ることができた。夢のような時間をありがとうございました!

日曜:友達のライブ

別の友人がやっているバンド のライブを觀に大塚のライブハウスに向かった。

ライブのテーマはロックンロール&バイクということで、まさに私に縁遠いもの二つが強力に合体したイベントであったが、普段接することがないものに触れることで心に新風が吹き込むのを感じた。

ところどころ出演者の魂の表現の熱いエネルギーを感じ取ることもできた。

ただしライブの轟音は私には大きすぎたので耳栓を着用した。これによって自分に適正な音量で気持ちよく音楽を楽しむことができた。いいね!

お盆休みの読書

北海道の実家から、川崎に帰ってきました! 実家で読んだ本を紹介します!!!!!!(都会に来たのでテンションが高い)

[小説]蜘蛛ですが、なにか? 1〜9巻

面白い! 素晴らしい! いい本読んだ! 面白くって一気に読んじゃった。

ていうか久しぶりに小説読んだ。小説って面白かったんだな。。。

読んでるとNetHack的なゲームがやりたくなってくる。でもゲームは面倒だから、もっと、なろう系の小説を読んで疑似体験しようかしら。。。

それにしても「蜘蛛ですが、なにか?」はかなり面白い。

なろう系にありがちな、子供が蟻をいじめて楽しむ的な無自覚な残虐さが薄く、そのかわりに読んでいて心地いい雰囲気が漂っています。

次元、神、ステータスといった世界の仕組みについての設定は知的な興奮がくすぐられます。

なんといっても主人公の前向きな性格が気持ちいですね。

[コミック]メイド・イン・アビス 1〜6巻

ぐえええええあああ。もうダメだ。キモすぎる。グロすぎる。

繊細な私の心ではこれ以上、読み進むことができません。悪い意味でキモくてグロい作品。

話はものすごく面白く、このキモさグロさも、なんというか人類の集合無意識の中にあるものを反映しているような深遠さを感じるのですが、何にせよ読んでいて辛い。

3巻以降、ドン引きの連続。

キミスイ(君の膵臓を食べたい)を読んで泣く私にはキツすぎる作品。

こんなの、本当に無理だから! もう一ページも読めないよ!(といいつつ6巻まで読んだ)

万人におすすめしない作品。面白いけど読まないほうがいいよ!

実家より その3

今日の活動

朝食に、昨日釣って捌いた小鯖のマリネをいただく。うまい! HPとMPとSPがフル回復した。

ピアノが全国レベルでうまい姪にギターを少し教える。さすがに飲み込みが早い。

昼からは皆で函館に遊びに行く。

昼食は道民のソウルフードであるハセガワストアのやきとり弁当を食べる。うまい! レベルが上がり、さらに各種ステータスがプラスされた。

いろいろ買い物をした後で、函館最大の文化施設である巨大な蔦屋書店に行く。

皆が買い物してる間、Sound&Recording紙の最新号を併設されているスタバで読む。

あー、久しぶりに文化的な気分。ほっとする。

中田ヤスタカ氏の特集もDTMerには興味深く読めるものである。

帰宅後、トイザらスで買ってきた人狼とカタンとUNOを皆でプレイする。

とても盛り上がった。

昨日のモノポリーでは誰にも負ける気がしなかったが、今日買ったゲームでは甥や姪の強さがよく発揮された。

よく遊んだ一日。いいですねー。

実家より その2

今日の活動

皆と今日も釣りに。最初に向かった砂浜では何も釣れず。港の堤防に移動し、そこでまた小鯖を釣りまくる。親切なおじさんがコマセを打って魚を呼んでくれる。隣のスペースでは関西の方から来たらしい家族が釣りを楽しんでいる。釣りまくった小鯖は姪と協力してさばいた。

その後、姪と甥と私でポケモン関係の楽曲を演奏して遊んだ。姪がピアノで私がギターで甥が歌を担当した。初見ではあったがいくつかの曲は上手に弾くことができた。

夕方には親戚の皆とバーベキューをした。バーベキュー中、いとこに今期のアニメは『ヤマノススメ サードシーズン』がおすすめである旨を伝えた。彼女はヤマノススメの一期二期をすでに見ており、登山を始めようかと思うほど楽しんでいたようだった。その件で話は大いに盛り上がった。

バーベキュー後、モノポリーをした。私は一時期、破産直前にまで追い込まれたが、耐え難きを耐え、最後にはホテルを建てまくって勝利することができた。

しかし勝利はただの結果であって、重要なのはプロセスである。

浮き沈みあるモノポリーの流れの全体を味わい、そのときどきの興奮と不安の双方を楽しむことがモノポリーというゲームの目的なのである。そういった意味においても、今回は十分に良いプレイをすることができたといえよう。

実家より

今日の本

昨日、新幹線の中でメイド・イン・アビスの次に読んできた「蜘蛛ですが、なにか?」の続きを読む。レベルアップで強くなる過程が丁寧に、気持ちよく描かれている。読むことで、NetHack的なRPGに感じる面白さのいいところだけを味わえた。

今日のアクティビティ

朝食後、堤防に父と甥と釣りに出かける。サビキの仕掛けを垂らした瞬間、甥が二匹、小鯖を釣り上げる。海の中を覗き込むと、かつて私が見たことのない大量の魚の群れが水面下を右往左往していた。

その後、すぐに雨が降ってきたのでほんの短時間しか釣りできなかったのだが、二十匹近く釣ってしまった。帰宅してYouTubeの動画でさばき方を調べ、下ごしらえしておいた。

昼には甥と作曲して遊んだ。カノンコードを甥に教え、それに合わせてメロディを適当に考えてもらい、ピアノとギターで演奏するという遊びである。Aメロ、Bメロ、サビとメロディをピアノで作ってもらい、最終的には一つの曲らしくなった。

そもそも音楽とは、こうやって遊ぶためのものであるということを私は理解した。楽器を上手くならねばならないとか、ライブとか、デビューとか、そういう方面に意識がいきがちだが、音楽とは何より身近な人と遊ぶためのものだ。

その遊びの中で、より楽しく遊ぶために、自発的に上達への意志が目覚めるというのが自然な流れであろう。