先日、友達の作家の
海猫沢めろんさんに誘っていただき、御徒町のモンゴル料理のお店で羊肉を食べる会に参加しました。
自宅ではほぼ草食動物として生きている私ですが、羊肉には道民の血が騒ぎます。
私が子供のころ、北海道ではあらゆるイベントでジンギズカンを食べる風習がありました。
海水浴に行けば、砂浜でジンギスカンを焼き、ピクニックに行けば見晴らしのいい丘の上でジンギスカンを焼き、マラソン大会では16キロ走ったあとでジンギスカンを焼き、特に何も無い日でもジンギスカンを焼き、ありとあらゆるシチュエーションの中で羊肉が消費されていきました。
そのため私の中で羊肉=ジンギスカンそのものであり、羊肉というものはそれ以外の食べ方をすると何か大きな不具合が生じるものであるという先入観がありました。
ですが御徒町のモンゴル料理のお店では、道民の想像を遥かに超えた多彩な羊料理がテーブルに並べられていきました。
そうか……羊肉は、ジンギスカンにするためだけのものじゃなかったんだ!
制限された観念が、新たなものに書き換わるとき、人はセンスオブワンダーを感じます。心にかかっていた古いフィルターが外れることによって、人は生まれ変わった世界を体験することができます。
これまで私の世界にはジンギスカンしかありませんでした。しかし今、私は多彩な羊肉料理のある世界に生きているのです。
これはいわば、一つの宇宙から別の宇宙へと引っ越すごとき跳躍といっても過言ではありません。
そんな大きな世界観の転換を果たした私は、その夜、精神的興奮によって、あるいは羊肉の何か健康にいい作用によって、なかなか寝つかれませんでした。
仕方ないのでいろんなマンガや本が無限に読み放題の
Kindle Unlimitedで、昔から慣れ親しんでいる漫画家さんの作品を読んで心を落ち着かせようとしたとき、ふと手元のiPhoneにメールが。
海猫沢めろん>YouTuberデビューのお知らせ
文字を読まずに本を読みたい!
そんな世界の読者のために、私、海猫沢めろんはこのたびYouTuber「文豪さん」としてデビューしました!
小学生でも共感できる「読書実況」という新たなるジャンルを開拓してまいります。
今後共ご指導ご鞭撻、YouTubeチャンネルの登録、リツイート等、賜りますようお願いしたします。ポスト平成時代の幕開けでございます。
海猫沢めろんさんと私は、物凄い長い間の友達です。
闇に包まれたゼロ年代初頭、私が生田のアパートに住んでいたひきこもり時代には、めろんさんにバイクでいろんなところに連れ出してもらいました。
今現在の精神的に安定している(当社比)私がいるのも、めろんさんのおかげである割合が相当に大きいと言っても過言ではありません。
そういえば、めろんさんと私は、やはりゼロ年代初頭にエリーツ(エリート達の意)というバンドを組んでいたこともありました。
(他のメンバーは作家の佐藤友哉さんと、めろんさんの弟さんと、今現在音楽プロデューサーをしている武術家の友人です)
音楽性の違いでバンドを解散したあとも、めろんさんと私は何かと一緒に活動することが多く、ともすれば社会との接点を見失いがちな私は大いに助けられてきました。
私の小説作品の中でも特に虚無濃度が限界を超えて高い『
僕のエア』には素晴らしい解説を書いていただきました。(本文も面白いですが、この解説だけでも読む価値あり)
近年では専門学校で交代で授業をしたり、ATLANTISというトークユニットを組んで、たまに
DOMMUNEに一緒に出たりしています。
というわけで、長年の交流から、めろんさんが進取の精神に溢れていることはわかっていたのですが、、、近年では
アナログゲームを作ったりもして、何でもやる人だなとはわかっていたのですが、まさかYouTuberデビューするとは。
私の予想を超えてさまざまなことに挑戦していくめろんさんの姿に、私はその日、二度目のセンスオブワンダーを味わいました。
羊はジンギスカンだけじゃなかったし、めろんさんは小説家だけじゃなかった!
そんな視野が広がる啓蒙体験を長年、惜しみなく提供してくるめろんさんに感謝しつつ、例のYouTubeビデオ(文学についての造詣が深まります)をここに貼って、本稿を終わりたいと思います。


海猫沢めろん戦慄のデビュー作。ゼロ年代の闇のすべてがここに。


ほっと癒やされるいい本です。


めろんさんの人間的魅力が詰まった自伝的小説。
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