増刷!『NHKにようこそ!』 “Welcome to the NHK!” Japanese Novel edition was reprinted again!

小説版『NHKにようこそ!』が増刷されました。2002年の発売から16年が経ちましたが、今も売れています。読者の皆さん、ありがとうございます! 1,000年後も読まれる作品になりますように!! “Welcome to the NHK!” Japanese Novel edition was reprinted again. Thank you all readers!

『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』が可愛い

2018年の冬休みのこと。実家で家族とテレビを観ていると、友達の海猫沢めろんさんからメールが来ました。メールには以下のリンクがありました。
「エホバの証人の活動のなかで、最もつらかったこと」元信者が告白 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54012 #現代ビジネス
『これが私に何の関係が?』と訝りながらも、とりあえずiPhoneのSafariで上のリンクを開いてみて驚きました。それはなんと私が書いた小説『NHKにようこそ!』を読んだことがひとつのきっかけとなって、エホバの証人という宗教団体を脱退することになった女性のインタビュー記事でした。(めろんさん、教えてくれてありがとう!)
『NHKにようこそ!』にはエホバの証人をモデルとした宗教団体が登場しますが、作者の私としてはそういった団体や、人様が信じているどんなものについてもディスるつもりはありません。 また私は今も昔もいわゆる宗教なるものについては、特に深い興味は持っておらず、その存在について良いとも悪いとも思っていません。(私が運営している別サイトPortal of Lightのテーマは、私の長年の興味の対象である瞑想や変性意識状態といったものですが、それは宗教的なものとは無関係なものです) ですが『NHKにようこそ!』では、ヒロインの中原岬が加入している宗教団体について、少し否定的な書き方をしてしまった感があり、それについては長年、気になっていました。 そもそもなぜ宗教団体なるものを『NHKにようこそ!』に登場させてしまったかと言うと、純粋に作劇上の必要性があったというのが理由のひとつとしてあります。 『NHK〜』を書くに当たり、『ひきこもりの主人公のもとにドラマティックに訪れてきてくれるヒロインとは、一体どういう存在なのだろうか。そんな存在はあり得ないじゃないか』と三日三晩、真剣に考えているうちに、『あ、そうか! よく俺のアパートに勧誘に来て冊子を置いてってくれるあの宗教団体の家の子をヒロインにすればいいんだ!』という天啓的閃きがあり、それによって岬というキャラは生まれました。 また当時、私にはネットで知り合ったエホバの二世の友人がいて、その友人のブログや、オフ会で会ったときに聞いた二世のリアルかつハードな苦労話などから、岬の生い立ちの材料をもらうことができました。また、その他、二三の資料から得た材料を使って、作中の宗教団体の描写を作りました。 執筆の際、宗教団体についてはできるだけ客観的な描写に留めようとしましたが、つい筆に勢いがついて、否定的な書き方をしてしまったのではないかと気になっていました。 作品の面白さを求めるあまり、軽はずみに現実の宗教団体や関係者をディスる内容になってしまったのではないかと、眠れぬ夜などに思い悩む日がありました。 しかし、このインタビュー記事を読んで、『NHK〜』の宗教団体関連の描写が、ときには読者にプラスの影響を与えたこともあったのだとわかり、作者として嬉しい気持ちで胸が一杯になりました。
上の記事でインタビューを受けているいしいさやさんは漫画家として活躍されていて、自らの体験を描いた『よく宗教勧誘にくる家に生まれた子の話』というコミックを講談社から出版されています。 さっそく買って読んでみました。 よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話(Amazon
  • 凄く可愛いほのぼのした、独特な魅力ある絵柄
  • ↑この絵柄で書かれるエクストリーム・ハードな内容
  • なんだかところどころエロい
  • 戒律を破ったため母にベルトでお尻を打たれる少女
  • 思春期の性の目覚め
  • 宗教的戒律による抑圧下での密かな性的行動
  • 王国会館のトイレであんなことが……!
さまざまな葛藤がある中で、主人公が性的なものと向き合う姿が、人間的な共感を呼ぶものとして表現されていると感じました。またそれが、このひたすら可愛い絵柄で描かれることによって、このコミックに不思議な魅力をもたらしていると感じました。 また、この話は、人間が成長するにあたり必ずくぐり抜けなければならない試練を、『宗教団体に違和感を感じ、自分の意志でそこから抜け出す』というエクストリームな実例によって描き出しているのではないかという印象を得ました。 宗教団体に入っているいないに関わらず、多かれ少なかれ、人間というものは何らかの固定化された世界観や信念を持って生きているものであると私は思います。そして、人間が成長するにつれて、旧来の世界観や信念が自分にそぐわないものになってくるときが必ずあると私は思います。 いわば手足が伸びるに連れて、子供服が自分の体に合わなくなるようなものですね。そのように、何かの世界観、何かの信念が自分に合わなくなったとき、それを勇気を出して捨てなければならなくなります。 それは、慣れ親しんだ家を捨てるようなものであり、今まで自分を守り、育ててきた大切なものを否定して捨てるようなことであり、それは時に大きな恐怖や痛みや罪悪感を伴うものであると思います。 そのような、ひとつの世界観から、新たな、より自由な世界観へと、殻を破りながら移行してゆく人間の成長の過程が、この漫画には、優しい筆致で淡々と、しかし鮮やかに描かれていました。

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  • 可愛い絵柄のマンガが読みたい人
  • 宗教団体の二世の生活について興味がある人
  • 家族との関係に思い悩んでいる人
  • 「NHKにようこそ!」の岬ちゃんが好きな人
  • 古い殻を破り、より自分らしい生き方をしてみたい人
こんな人におすすめのコミックです。

牧野由依さんのニューアルバム『WILL』が凄い

このページは、小説家としての滝本竜彦の活動についていろいろ書いていくつもりのページです。新作小説等が出版された際の宣伝の場として作っています。 ですが自分の新作を紹介するのはもうちょっと先になりそう。でもせっかく用意したブログだから、何かに活用したい! というわけで、今日は牧野由依さんのニューアルバム『Will』について紹介させていただきたいと思います。 牧野由依さんといえば『NHKにようこそ!』のアニメの中原岬の声優をしてくださった方で、他にも多くの有名キャラの声をされている方です。透明感があり繊細で可愛らしく、それでいて芯がある、独特の魅力のある声で、多くのキャラに生命を吹き込んでいます。アーティスト活動もされており、CDも沢山出しています。私も牧野さんの歌が好きでよくiPhoneで聴いています。 ところで先日、アニメ『NHKにようこそ!』十一周年記念同窓会というイベントがありました。少し緊張しながら新宿の格好いいビルの上の方にある居酒屋に行ったところ、ふと気づくと隣の席に牧野さんがいて、それに気づいた瞬間、頭が真っ白になりました。 なんていうんでしょうか、メディアの向こうにいる人が現実に現れたという、ありえないことが起きている認知的不協和によって、脳がパニックに陥ったようです。びっくりしました。 しかも斜め前には阪口大助さんが座っていることにも気づき、さらに驚いてしばらくフリーズしてしまいました。なんとか「Vガンダムの頃からファンです」とお伝えすることができて良かったです。 佐藤達広役の小泉豊さんは現在、声優業とともに音響監督の仕事もされているそうで、びしっとしたジャケット姿と、仕事に対する情熱が感じられる誠実そうな語り口が素敵でした。『NHKにようこそ!』は声優の皆さんの名演技の宝庫です。 山本裕介監督は今年の夏に放送開始の『ヤマノススメサードシーズン』を製作中とのことで、今からすごく楽しみです。『ヤマノススメ』は可愛い女の子たちが登山して成長していくという物語で、アニメコミックも凄い面白いのでおすすめです。『NHKにようこそ!』の後に観ると、ちょうどバランスが取れていい感じになると思います。私はこのアニメの影響で、昨年、友達の海猫沢めろんさんと佐藤友哉さんと高尾山に登りました。
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スタッフとキャストのみなさん
で、この席で牧野さんとお話させていただいたご縁で、3月21日に発売になったばかりの牧野さんのニューアルバム『WILL』のサンプルを、なんと頂いてしまいました。 さっそく聴いてみたところとんでもなくいいアルバムだったので、感想を書いてみたいと思います。
  • 一曲目 Reset – A Cappella Version-
    • 全編、牧野さんのボイスパーカッションと声で作られている曲。何重にも録音された声によって作られた曲の世界にふわっと包まれることができ、寝る前などに聴くといい夢が見られそうです。アルバムの世界にすっと入っていける曲です。
  • 二曲目 song for you
    • リスナーを応援してくれる曲と歌に、シンプルな力強さが感じられる曲。歌詞がまっすぐ心に入ってくる曲です。ぐっと熱い気持ちになれます。
  • 三曲目 ウィークエンド・ランデヴー
    • 四つ打ちの気持ちいいビートの上におもちゃ箱の中身を広げたような楽しい感じが乗っかった曲。思いっきり日本語の歌詞の曲なんですが、歌も演奏の音として機能としているためか、歌の内容が日常的な意識に引っかかることのない、現代的なダンスミュージックとして気持ちよく聴ける曲です。こういう曲は何回でも聴けそう。抽象的なポップアートを見たときのような、日常的な意味性を超えたアブストラクトな楽しさが感じられます。
  • 四曲目 What A Beautiful World -Studio Live Version-
    • 崇高な光に優しくふわっと包まれ持ち上げられる感覚とともに、人間らしい切実さや可愛らしさが凝縮されたような歌声の表現が心の琴線を揺らす曲。崇高さと人間らしさが一つの曲の中でハーモニーを奏でており、スペクトルの広い感動が得られる曲。ていうか心揺さぶる名曲。これはぜひ多くの人に聴いてほしい曲です。
  • 五曲目 Colors of Happiness
    • 格好いい物語性が感じられるドラマティックな曲。映像的な物語性が感じられる曲でありながら、歌や旋律だけに意識を飲み込まれることのない、曲全体に意識を包まれるような不思議なリスニング体験ができる曲です。現代的というか未来的な手触りを強く感じました。
  • 六曲目 それはきっとボクらしく生きる勇気
    • もっとも人生のリアルなアレコレを強く感じさせる歌詞の曲ですが、歌が透明な水のようにまったく抵抗なく心に入ってきて、あとに一切の淀みを残さず、ピュアな安心感ややる気のみを残していく曲です。
  • 七曲目 ハウリング
    • リズムと楽しさが際立つ曲。未来に向かって楽しさや情熱が波紋のように広がっていくのが感じられます。そういった前向きな雰囲気が、歌詞の意味として入ってくるのではなくて、歌と曲の音を通してスッと無抵抗に心に伝わってきます。
ハイレベルで現代的な楽曲と、魅力と表現力に溢れた歌声の融合によって、聴くごとに心の栄養分がチャージされていくような、それでいて日々の音楽として軽く楽しく気持ちよく聴ける、そんなアルバムとなっていると感じました。これからヘビーローテーションで聴いていきたいと思います。
  • 音楽が好きな人
  • 美しい歌声が聴きたい人
  • 心を高揚させるものを求めている人
  • 「NHKにようこそ!」の岬ちゃんが好きな人
特にこういった方々におすすめのアルバムです。 Will 通常版(Amazon Will 初回限定盤(Amazon)